離婚後の共同親権法案、衆院通過 虐待・DV防止になお懸念

 離婚後は父母どちらかの単独親権とする規定を見直し、共同親権を選べるようにする民法改正案が16日、衆院本会議で与党などの賛成多数により可決された。参院に送られる。衆院審議では、父母が親権の在り方を決める際に「真意を確認する措置を検討する」と付則に盛り込むなどの修正がされたが、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)の被害継続防止になお懸念の声がある。参院の審議も注目される。

離婚後に共同親権を選べるようにする民法改正案を可決した衆院本会議=16日午後
離婚後に共同親権を選べるようにする民法改正案を可決した衆院本会議=16日午後

 改正案は、家族関係の多様化に対応し、離婚後も父母双方が養育に関われるようにすることが狙い。父母が協議で親権の在り方を決め、折り合えなければ家裁が判断する。成立すれば2026年までに施行。既に離婚した父母も、共同親権への変更を申し立てられる。
 家裁は虐待・DVの恐れがあれば父母どちらかの単独親権と定め、加害者との共同親権は認めないとする。ただ衆院法務委員会の審議では「家裁の体制は不十分で、被害を見逃す恐れがある」と指摘された。密室で証拠が残りにくく、立証が困難との意見も出た。
 法務委では与野党の修正合意に基づき、DVなどで父母の力関係に差があり、対等に話し合えないケースを念頭に、真意確認措置の検討を付則に加えた。施行5年後の見直し規定も盛り込んだ。また家裁への申し立て増加を見据え、付帯決議で体制整備を求めた。
 改正案は他に、続発する養育費不払いへの対策として、離婚時に取り決めがなくても最低限の支払いを義務付ける「法定養育費」を創設する。別居親の要望が強い子との面会交流の試行を家裁が促す新制度も設ける。

 離婚と親権 離婚は協議や裁判手続きを経て婚姻を解消する。法務省によると、1960年の1年間に父母が離婚した未成年の子どもは約7万人だったが、2021年は約18万人に増加した。親権は未成年の子に対し、身の回りの世話・教育といった身上監護や、財産管理をする権利で、義務の性質もあるとされる。現行民法では、婚姻中は父母が共同で親権を持つが、離婚後は父母の一方を親権者にすると定め、双方が親権者になることはできない。

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