休職や離職 前向きに捉え キャリアブレイクで休憩やスキルアップ

 休職や離職など一時的に会社から離れる期間に休憩(ブレイク)し、人生を見詰め直す「キャリアブレイク」という概念がある。欧米で浸透している言葉で、日本でも自分の考えを整理したり、スキルアップしたりと前向きに捉えようとする動きがある。

キャリアブレイク研究所が主催する休職者らの交流会「無職酒場」
キャリアブレイク研究所が主催する休職者らの交流会「無職酒場」

 大阪市に住む女性(34)はアパレル会社で10年間働いてきたが、昨年12月に業務のストレスにより適応障害と診断され、現在休職している。
 「休職中の過ごし方をインターネットで調べ、キャリアブレイクという概念を知りました。当初は休むことに後ろめたさを感じていましたが、料理や読書など自分がやりたかったことをするうちに、すり減った心が潤うように感じました」
 コンサルティング会社代表の森江朝広さん(46)は20代後半のころ、勤めていた広告代理店を辞め、その後3カ月間で家族旅行や転職活動をした。「長時間労働に疲れて退社しました。自由な時間ができたので、希望の業界で働く人から業務内容をじっくり聞くことができ、仕事観や人間関係など自分が大切にしたいことを見つけられました」。その後は転職をへて、10年前に起業した。
 「日本社会では働き続けることが美徳とされるため、無職や休職はネガティブな捉え方をされることが多いです」と話すのは、キャリアブレイク研究所(神戸市)の北野貴大さん。
 北野さんは、休職中の人や休職を考えている人が意見交換するイベントを主催している。参加者の中には、留学やワーキングホリデーなどに進む人もいるという。「働きたくないわけではなく、現状に疑問を感じ、意味のある仕事をしたいと考えている人が多い。キャリアブレイク中に自分が本来やりたかったことを思い出し、次に進めば、働く上でぶれない軸を持てると思います」
 労働問題に詳しい法政大大学院の石山恒貴教授は「息苦しいときに職場を離れ、さまざまな経験をすれば有意義な時間を過ごすことができます。企業にとっては、そうした経験をした人材を採用することで、新しい観点や情報、人脈などを得て組織の発展につながるでしょう」とみる。

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