核心核論(2月12日)関係改善の先に 日本「不安」 韓国「不満」

 日本や韓国で、取材相手から「日韓関係が良くなり本当によかった」という声を頻繁に耳にするようになった。昨年3月、岸田文雄首相と韓国の尹錫悦[ユンソンニョル]大統領が元徴用工問題を巡る解決策で合意し、両国の関係改善が進んだことの表れだろう。
 そうした雰囲気は数字にも反映されている。内閣府が1月に公表した世論調査の結果によると、日韓関係は「良好だと思う」「まあ良好だと思う」との回答が計46・1%で、前年から17・8ポイント増と大幅に好転した。
 「戦後最悪」とも言われた日韓関係が改善したことは、歓迎すべきことだ。だが、取材相手と話をしていると、そうした安堵[あんど]の先に、日韓それぞれで異なる思いが浮かんでくる。その思いとは「不安」と「不満」だ。
 日本側は、尹氏の政権運営を評価しつつも「4月の総選挙で与党が負けたら、レームダック(死に体)化が進むのではないか」「次期大統領選で政権交代したら、日本との対立路線に変わるのではないか」といった「不安」を口にする。一方、韓国側には、徴用工問題の解決策を念頭に「韓国が一方的に譲歩しただけではないか」といった「不満」の声が根強い。
 日本によって植民地支配された過去を持つ韓国は、歴史問題に敏感だ。それが日韓関係に刺さるとげとなり、幾度も政治問題化してきた。だが、相手への攻撃と不信からは何も生まれないことは明らかだ。
 「不安」と「不満」の溝を埋めるには、互いが対等な立場で議論していくしかない。問題解決を片方だけに押し付けていては、関係改善もいずれは薄氷を踏むような状態となる。
 「戦後最悪」の時期を脱してから、互いにどう発展させていくか。今年の日韓関係は、まさに「正念場」にある。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞