政府 NISC職員倍増 対サイバー攻撃 能力向上へ 新たに次官級配置 来年度方針

 政府は、政府機関へのサイバー攻撃や不正アクセスを監視し、安全確保を担う内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の人員を2024年度に倍増させる方針を決めた。新たに次官級、局長級を配置し、指揮系統も強化する。サイバー攻撃の脅威が高まっている現状を踏まえ、政府機関システムの監視や攻撃を受けた際の対処能力を向上させる狙い。関係者が30日明らかにした。

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)態勢強化のイメージ
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)態勢強化のイメージ


 NISCトップのセンター長は内閣官房副長官補が務めている。現在はその下に専任の局次長級の内閣審議官3人を配置している。24年度からは次官級1人、局長級2人、局次長級3人を充てる計画だ。関係者によると、常勤の人員は現在約90人で、85人増員させる。これとは別に、専門知識を持つ民間の非常勤職員も増やす予定だ。
 昨年12月に策定した国家安全保障戦略は「サイバー安保分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる」と明記。政府機関システムを常時分析し、脅威対策やシステムの脆弱(ぜいじゃく)性を是正するための仕組みを構築するとしており、NISCの態勢強化で具体化を図る。
 政府は、将来的にNISCを発展的に改組し、サイバー安保分野の政策を統括する新組織を創設する方針を掲げている。サイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の運用も担う見通し。政府関係者は「NISCの増員と幹部職員強化はサイバー分野の先進国に追いつくための一歩だ」と話した。
 今年夏ごろに宇宙航空研究開発機構(JAXA)の管理用サーバーが不正アクセスを受けるなど政府や関連機関がサイバー攻撃を受ける懸念は高まっている。
高まる脅威に危機感  政府が内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の人員を倍増させるのは、政府機関や重要インフラに対するサイバー攻撃の脅威が高まっているとの危機感がある。日本のサイバー防護は欧米諸国と比べて立ち遅れていると評価され、態勢強化を急ぐ。
 政府機関へのサイバー攻撃を巡っては、今年夏ごろに宇宙航空研究開発機構(JAXA)の管理用サーバーが不正アクセスを受けていたことが判明。JAXAはロケットや衛星などの機微情報は漏えいしていないとしているが、警察当局から連絡があるまで攻撃に気付いていなかった。
 7月に名古屋港がサイバー攻撃を受けてコンテナの搬出入作業が停止する事態に発展。8月にはNISC自体が不正アクセスを受けていたと発表した。メールデータの一部が漏えいしたとみられる。
 英国のシンクタンク、国際戦略研究所は2021年、日本はサイバー防衛分野が未熟で、デジタル分野の総合的な実力で最下位グループだと分析した。NISCは政府や重要インフラ事業者のサイバー防護支援を担うが「人員や権限が少なく、十分に機能していない」(政府関係者)と指摘される。

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