生殖能力の診断記載不要と通知 政府、性別変更要件で自治体に

 厚生労働、法務両省は12日、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する際に必要な医師の診断書に関し、生殖能力があるかどうかの記載を当面の間、不要にするとの通知を全国の自治体や関係学会に出した。最高裁が10月の決定で、生殖能力をなくす手術を性別変更の事実上の要件とする性同一性障害特例法の規定「生殖能力要件」を憲法違反と判断したことを踏まえた。

最高裁判所=東京都千代田区
最高裁判所=東京都千代田区

 これまでは診断書に記載を求めていたが、通知では「なくても差し支えない」とした。岸田文雄首相は「与党とも十分に相談しながら適切に対応する」としているが、法改正に向けた議論は保守派の慎重論もあり、大きな進展はない。
 戸籍上の性別を変更するには家庭裁判所の審判を受け、要件を満たすかどうか判断される。この際に2人以上の医師による性同一性障害との診断書が必要で、厚労省が診断書の記載内容を定めている。今回の通知では「生殖腺機能に関する記載がなくても差し支えない」とする取り扱いを医師らに周知するよう自治体や関係学会に求めた。
 特例法の生殖能力要件について最高裁決定は、医療の進歩によって現在では手術の必要がない人にも性別変更に当たって手術をするか、性別変更断念かの過酷な二者択一を迫っていると指摘。憲法13条が保障する「意思に反して身体への侵襲を受けない自由」への制約は重大だと判断した。

 性同一性障害特例法 自認する性別が出生時と異なるトランスジェンダーの人などが戸籍上の性別を変更する要件を定める。2人以上の医師から性同一性障害と診断された上で(1)18歳以上(2)婚姻していない(3)未成年の子がいない(4)生殖機能がない(5)変更後の性別の性器部分に似た外観がある―の要件を全て満たせば、家裁の審判を経て変更が認められるとしている。

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