減税・給付5兆円決定 経済対策、総額17兆円

 政府は2日の臨時閣議で経済対策を決定した。物価高の家計負担を緩和する所得税と住民税の減税と、減税の恩恵を受けられない非課税の低所得世帯向けを中心とする給付が柱で、合計5兆円強とした。物価が下がって経済が停滞する「デフレからの完全脱却」を掲げて、企業の賃上げや投資の促進策も盛り込み、総額を示す規模は17兆円台前半と見込んだ。財源の多くを借金となる国債の増発で賄う見通しで、財政悪化は避けられない。

岸田文雄首相
岸田文雄首相

 岸田文雄首相は閣議決定後に記者会見し「今まさにデフレ脱却の瀬戸際だ。今回のチャンスを逃せば難しくなる。確実に可処分所得を伸ばし、消費拡大につなげ、好循環を実現する」と述べた。
 対策の裏付けとなる2023年度補正予算案を20日をめどに臨時国会に提出し、11月下旬の成立を目指す。一般会計に13兆1千億円を計上し、財源の一部に23年度の予備費から取り崩す2兆5千億円を充てる。低所得世帯への7万円給付は年内に始め、必要な1兆1千億円は補正予算案で手当てする。1人当たり計4万円の減税は24年6月から開始する。
 13兆1千億円に、減税規模である3兆5千億円程度と、納税額が少なく減税の恩恵を十分に受けられない人への支援を加えた金額を対策規模とした。地方自治体や民間企業の支出分などを合わせた事業規模は37兆4千億円程度で、国内総生産(GDP)の実質成長率を年1・2%程度押し上げると推計した。
 政府は22年10月にも物価高対応の経済対策を決め、裏付けとする第2次補正予算に約29兆円を計上した。今回の補正予算案は計上額が減るが、4兆円前後で推移した新型コロナウイルス禍前の水準は大きく超える。財政支出を平時のレベルに戻すという政府方針との整合性が問われそうだ。
 ガソリンなどの燃油と電気・都市ガス代を抑える補助金を来春まで延長し、賃金を引き上げた中小企業の税金優遇策を強化する。産業振興の鍵を握り、経済安全保障の面からも重要な半導体の生産を支援し、宇宙分野の技術開発を後押しする基金を設ける。児童手当を拡充した分の初支給を前倒しし、国土強靱化で防災対策を盛り込んだ。

 経済対策 政府が金融危機や災害などの非常事態に対応して、経済を下支えするために実施する政策。主な手法として給付金を配るなどの財政支出、減税、民間企業を活性化させる規制緩和の三つがある。財政支出は、年度途中で補正予算を成立させて裏付けるのが一般的。対策の規模は、国の支出額である「国費」、民間企業の支出などを含めた「事業規模」といった複数の尺度がある。近年は新型コロナウイルス禍や物価高への対応で規模が膨らんでいる。

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