戸籍の性別変更、再び憲法判断へ 手術要件巡り、最高裁大法廷

 心と体の性が一致しない性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する場合、生殖能力をなくすことを要件としている特例法の規定が憲法に反するかどうかが争われた家事審判で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は27日、弁論を開いて申立人側の意見を聴いた。年内にも決定を出し、憲法判断を示す見通し。要件は2019年に最高裁が「現時点で合憲」と判断しており、その後の社会情勢などをどう考慮するかが焦点となる。

記者会見する代理人の吉田昌史弁護士(右)ら=27日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ
記者会見する代理人の吉田昌史弁護士(右)ら=27日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ

 04年に施行された性同一性障害特例法は、性別変更の要件の一つとして「生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を規定。事実上手術を要する内容の是非が議論になっている。
 大法廷の弁論では、申立人の代理人が「自身の性別の在り方が尊重されることは、憲法により全ての個人に保障される基本的人権だ」と指摘。特例法が性同一性障害者の人権回復のために制定された趣旨に照らし「(申立人が)自分の性別で安心して生きることができるような判断を心からお願いします」と求めた。
 申立人は戸籍が男性で、性自認が女性の西日本に住む50歳未満の社会人。性同一性障害の診断を受け、長年ホルモン療法を続けている。生殖能力をなくす手術を経ずに性別変更を求めており、規定について「過大な身体的、経済的負担を課し、個人の尊重や法の下の平等を定めた憲法に反する」と主張している。
 自身はプライバシーへの懸念から公開の弁論には出廷しなかった。代理人によると、最高裁が前日の26日に設けた非公開の「審問」の場で大法廷の裁判官全15人に「性別変更を認めてもらえると、私の人生は助かります」と訴えたという。
 家裁では20年5月、高裁段階では同9月に申し立てを退けられており、いずれも手術を受けていないのが理由だった。

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