数字ほど内容は良くない4~6月期GDP、むしろ追加経済対策が必要だ【永浜利広 深読み経済ニュース】

 先週、内閣府から4~6月期の実質国内総生産(GDP)1次速報が公表されました。結果は前期比年率6.0%増となり、事前の市場予想を2倍近く上回りました。そして、名目成長率に至っては同12.0%増と2桁成長を記録し、名目成長率が税収と深い関係があることからすれば、今年度の税収も大きく上振れする可能性が高まったといえるでしょう。

永浜利広(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
永浜利広(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

 しかし内訳をみると、必ずしも国内経済が良くなっているわけではないことがわかります。というのも成長率6.0%のうち7割を上回る4.4%ポイント分が、輸入の減少のみで説明できるからです。
 そもそもGDPは国内で生み出された付加価値の合計を示すものですから、海外で生み出された付加価値である輸入は控除することになります。そして、輸入は国内需要の状況に応じて左右されることから、輸入が減るということはGDPの押し上げ要因になるものの、一方で国内需要が弱いことを示します。
 そして実際にGDPの国内需要はマイナス寄与となっています。中でも最大の押し下げ要因が個人消費であり、設備投資も横ばいにとどまっています。特に個人消費に関しては、新型コロナウイルス感染症の5類移行などによってサービス消費が回復した以上に、値上げラッシュなどに伴い生活必需品を中心とした財の消費が落ち込みました。
 こうした中、中国の日本への団体旅行解禁などもあり、今後はインバウンド消費のさらなる拡大が期待できるでしょう。しかし、インバウンド消費は「輸出」に計上されることから、国内需要の拡大に直接寄与しないことには注意が必要です。
 一方で、足元では再度原油価格の上昇と円安が進みつつあり、値上げラッシュはとどまりそうにありません。こうした中で、先のとおり国内の値上げと輸入物価の低下により名目経済成長率は大幅に上振れしています。今年度の税収も大幅に上振れることは必至な状況といえるでしょう。
 こうした状況を勘案すれば、岸田政権は行き過ぎた民間部門から政府部門への所得移転を是正すべく、物価高対策の延長などの追加経済対策策定に一刻も早く取り組むべきでしょう。(永浜利広、毎週火曜更新)
 ☆ながはま・としひろ 第一生命経済研究所首席エコノミスト。1971年栃木県出身。早大理工学部卒、東大大学院経済研究科修士修了。第一生命保険入社後、日本経済研究センター出向を経て、現職。経済関連の著書多数。新聞各紙へのコメントのほか、NHK日曜討論などテレビにも数多く出演している。最新刊「給料が上がらないのは、円安のせいですか? 通貨で読み解く経済の仕組み」(PHP研究所)が発売中。

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