コロナ5類移行から1カ月 死者数の動向、専門家注視 第9波でさらなる増加懸念【大型サイド】
新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが「5類」に移行してから1カ月がたったが、流行は今も継続している。専門家が懸念しているのは、これまで流行の波ごとに死者の数が増加する傾向にある点だ。今後起きると予想される流行「第9波」では、さらに被害が大きくなってしまうのか、あるいは死者数が減少傾向になり、流行がだんだんと落ち着いていくのか。今後の動向を注視している。
![新型コロナ 国内流行の波ごとの感染者数と死者数](/news/images/n126/1254728/PN2023060801000468.-.-.CI0003.jpg)
▽倍増
「驚かれるかもしれないが、亡くなった人は第7波より第8波の方が多い。増えていっている」。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は5月、共同通信のインタビューでこう指摘した。
実際、死者数は流行の波が来るたびに増える傾向にある。厚生労働省の専門家組織の有志がまとめた分析資料によると、特に今年1月にピークを迎えた第8波は顕著で、昨夏の第7波のほぼ倍に当たる約2万8千人が死亡した。
感染者数を見ると、第8波は第7波より少し少ないが、感染者数の全数把握の方法が簡略化されたことに伴い、自己検査で陽性となっても報告しないケースが増えたとみられ、専門家有志は「実際の感染者数はもっと多かった」との見解を示している。
尾身氏は「オミクロン株の致死率は低いが、感染力がかなり強く、感染者が大きく増えたため、結果として亡くなる人の数が増えてしまった」と分析。第8波での死者急増については、80歳以上の感染報告の割合が、第7波の約1・3倍に増えたことも一因と考えられている。
▽先行事例
多くの専門家は、今後第9波が起きる可能性が高いとみているが、流行の規模はどうなるのか。
“先行事例”として注目されるのが英国だ。専門家有志がまとめた資料によると、英国は、オミクロン株が広がった2022年1月以降、流行の波ごとに規模は縮小していて、重症者数や死者数のピークも徐々に低くなっている。人口の86%以上が既に感染歴を持っているのが理由の一つと考えられる。
尾身氏は「日本は死者数が増え続けている。英国のようになるにはまだ時間がかかるだろう」と指摘しつつ、「第9波でどうなるのかが非常に重要だ」と強調する。
日本では、感染によってできる抗体を持っている人の割合が40%程度と欧米に比べて低い。専門家有志の分析でも、流行の規模が小さくなっていくサイクルに入るのは「第9波よりもそれ以降に起こる可能性の方が高い」と指摘している。
▽高齢者を守る
分析に関わった京都大の西浦博教授(理論疫学)も「第7波よりも第8波の方が患者数も死亡者数も減少傾向にあるのが明確なのは沖縄県だけ。他の都道府県では流行が減衰する保証はない」と警鐘を鳴らす。
さらなる大規模な流行の可能性が残されている状況でどう死者数を抑えるか。尾身氏はこう呼びかける。「若い人は感染しても重くはならないと分かっている。一番の問題は高齢者。高齢者をみんなでどう守るかを考える必要がある」