新しい資本主義 学び直し、半導体に手厚く 賃金・投資拡大が焦点【大型サイド】

 政府が改定案を示した「新しい資本主義」の実行計画では、岸田文雄首相が重視する働く人のリスキリング(学び直し)や、半導体産業の国内立地への支援に資金を手厚く振り向ける。こうした施策を呼び水に民間投資の拡大や、賃上げを通じた経済の好循環につなげられるかが焦点となる。

新しい資本主義の主要施策
新しい資本主義の主要施策

 ▽転職後押し
 物価を反映させた実質賃金の伸びを見ると、日本は1991年からほぼ横ばいで、米国(1・52倍)などと比べて後れを取っている。先進国ではITなど高い技能が求められる職種の賃金は高い傾向にあり、日本でも政府が労働者の主体的な学び直しを支援して成長分野への人材移動を促し、賃金上昇につなげたい考えだ。
 雇用保険の教育訓練でIT分野などの補助率を高めるほか、休業手当を国が補填する雇用調整助成金も見直し、教育訓練を選択しやすくする。
 失業給付は、転職など自己都合で退職した人には原則2カ月の給付制限があり、すぐに受け取ることができない。これを過去1年以内に学び直しをしていれば、申請後7日程度で給付を受けられる方向で検討する。早期給付により、安心して転職活動に取り組めるようにする。
 ▽大盤振る舞い
 半導体で世界市場の半分を占めた日本のシェアは約1割にまで低下した。米中のハイテク覇権競争の激化を受け、各国は半導体の安定確保へ巨額投資を加速しており「日本もてこ入れしなければ取り残される」(経済産業省幹部)として、戦略分野の先端技術を税制・予算の両面で支援する。
 政府の半導体支援は既に1兆円規模に達した。受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県の新工場に最大4760億円を補助するほか、日本の主要企業が出資する「ラピダス」には計3300億円の助成を決定済みだ。
 大盤振る舞いに業界では「もらえるものは何でもありがたい」と歓迎の声がある一方、もし対中輸出規制の対象が広がるようなら「事業に影響が出て苦しくなる」(関係者)との懸念も出ている。
 ▽起爆剤
 経済活性化の起爆剤として期待するスタートアップ(新興企業)支援では、米マサチューセッツ工科大(MIT)と共同で育成拠点を東京都内に創設する検討を進める。日本は欧米と比べて「スタートアップに飛び込む優秀な人材が多くない」(支援事業会社「ケップル」の神先孝裕氏)ため、大手からの転職を後押しする環境整備も課題になる。
 政府は、スタートアップなど企業の事業再構築を促すため、金融債務を減額しやすくする法制度も整備する方針だ。

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