1~3月期GDP、経済正常化は道半ば【永浜利広 深読み経済ニュース】

 先週、内閣府から2023年1~3月期の実質国内総生産(GDP)1次速報が公表されました。これによれば、経済成長率は前期比年率1・6%増となりました。

永浜利広(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
永浜利広(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

 内訳を見ると、海外経済の減速等による輸出の減少が大きく足を引っ張りましたが、コロナ禍からの正常化の進展等により個人消費が高い伸びとなったことのほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)、経済安全保障向け等に設備投資が拡大したことがけん引役となり、3四半期ぶりのプラス成長になりました。
 ただ、今回の実質GDPの水準を過去と比較すると、コロナ前となる2019年の平均水準から依然として0・6%低いことからすれば、コロナからの経済正常化は道半ばと言えるでしょう。
 しかし、年度明け以降を展望すれば、実質GDPはさらなる拡大が見込まれるでしょう。背景には、インバウンド需要の回復とサービス消費の持ち直しが著しいことがあります。特に水際対策が終了したことでさらなるインバウンド消費の拡大が予想され、中でもこれから回復が本格化する中国人観光客が大きなけん引役となることが期待されます。
 日本人の消費は、値上げラッシュでモノの消費の節約志向が続いていますが、ゴールデンウイーク(GW)明けにコロナの感染症法上の分類が2類から5類に引き下げられたことから、サービス消費を中心にさらなる回復が期待されます。
 一方、懸念されるのが引き続き海外需要でしょう。依然として世界的な半導体や機械の在庫循環が反転していないことに加え、今後はこれまでに実施された欧米の利上げの影響が顕在化してくる可能性があります。特に、世界的な金融不安の影響により米銀の貸出態度が厳格化していることには注意が必要でしょう。
 以上より、今後も海外から遅れたコロナ禍からの経済正常化に伴う国内需要の回復により、引き続き日本経済が底堅く推移することが期待されますが、インバウンド消費を除く財の海外需要が低迷を続けることから、回復ペースは緩やかなものにとどまると予想されます。(永浜利広、毎週火曜更新)
 ☆ながはま・としひろ 第一生命経済研究所首席エコノミスト。1971年栃木県出身。早大理工学部卒、東大大学院経済研究科修士修了。第一生命保険入社後、日本経済研究センター出向を経て、現職。経済関連の著書多数。新聞各紙へのコメントのほか、NHK日曜討論などテレビにも数多く出演している。最新刊「給料が上がらないのは、円安のせいですか? 通貨で読み解く経済の仕組み」(PHP研究所)が発売中。

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