手話通訳、確保に課題 東京開催のデフリンピック【スクランブル】

 2025年に東京都を中心に開催される聴覚障害者の国際総合スポーツ大会「デフリンピック」へ向け、手話通訳の確保が課題となっている。国内にはスポーツに精通した人材や国際手話の使い手が少なく、関係団体が研修会の開催などを通じて育成に乗り出している。デジタル技術を駆使し、意思疎通を補おうという試みもある。

コミュニケーション技術の展示会で手話を使って話す、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手=2月、東京都千代田区
コミュニケーション技術の展示会で手話を使って話す、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手=2月、東京都千代田区
音声翻訳システムを体験する、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手(手前右)=2月、東京都千代田区
音声翻訳システムを体験する、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手(手前右)=2月、東京都千代田区
全日本ろうあ連盟が主催した研修会で、オンライン参加した日本デフ水泳協会関係者の講師から「飛び込み」の手話を教わる参加者=2月、東京都文京区
全日本ろうあ連盟が主催した研修会で、オンライン参加した日本デフ水泳協会関係者の講師から「飛び込み」の手話を教わる参加者=2月、東京都文京区
コミュニケーション技術の展示会で手話を使って話す、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手=2月、東京都千代田区
音声翻訳システムを体験する、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手(手前右)=2月、東京都千代田区
全日本ろうあ連盟が主催した研修会で、オンライン参加した日本デフ水泳協会関係者の講師から「飛び込み」の手話を教わる参加者=2月、東京都文京区

 2月中旬、東京都内で全日本ろうあ連盟が主催した研修会には、特別支援学校の職員など約300人が参加した。講師役を務めた日本デフ水泳協会の関係者はオンラインで手話を披露。「『飛び込み』は、このように動かします」。右手で半円を描いて選手がプールへ入水する様子を表現すると、参加者は見よう見まねで手を動かした。
 スポーツ医科学や各競技の基礎知識に精通した通訳の育成が目的で、21年から開催されている。同連盟スポーツ委員会の山田尚人事務局長(42)は「日本ではスポーツは(娯楽として)楽しむという位置づけで、通訳を確保する必要性があまり認識されてこなかった。デフリンピックの開催に向けて、ここがスタート」と力説する。
 大会には70~80カ国・地域から5千人を超える選手団の参加が見込まれている。厚生労働省認定の試験に合格し、登録している「手話通訳士」は約4千人いるが、世界共通で使われる国際手話の熟練者は一握りだ。危機感を強めた東京都は4月から、国際手話の講習会を運営する団体と受講生に費用の一部を助成する事業を始めた。
 受講生の要件は「国際手話人材やボランティア等、大会運営に参画する意思を有する者」とし、上限で年間8万円を支給する。都の担当者は「支援を行うことで裾野拡大を図りたい」と話す。
 人材不足を補う手段の一つとして期待されるのがデジタル技術の活用だ。2月に行われた聴覚障害者空手の全国大会では、人工知能(AI)を駆使した音声翻訳システムの実証実験が行われた。
 声で話した内容が透明なディスプレーに表示される仕組みで、発話が難しい聴覚障害者はキーボードで伝えたいことを入力する。15言語に対応し、大会期間中に会場やホテルでの利用が検討されている。
 企業が開発したコミュニケーション技術を集めた展示会が2月末に東京都内で開催され、この音声翻訳システムも出展された。体験したデフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手(22)は「聞こえない人と話す手段は、いろいろとあることを知ってもらいたい。大会を通じ、誰もが普通に会話ができる社会になってほしい」と期待した。

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