コロナ後遺症 病に無理解、社会復帰の壁 5類移行で関心薄れも【大型サイド】

 新型コロナウイルス感染者数が減り、5月には感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行する中、後遺症に苦しむ人の社会復帰支援が課題になっている。倦怠感など症状の長期化に加え、職場の無理解が壁になり、復帰の見通しが立たない例も。政府は対策を強化する方針だが、関係者は社会の関心の薄れを懸念する。

診察するヒラハタクリニックの平畑光一医師=4月、東京都渋谷区(同クリニック提供)
診察するヒラハタクリニックの平畑光一医師=4月、東京都渋谷区(同クリニック提供)
新型コロナウイルス感染症 後遺症の症状例
新型コロナウイルス感染症 後遺症の症状例
診察するヒラハタクリニックの平畑光一医師=4月、東京都渋谷区(同クリニック提供)
新型コロナウイルス感染症 後遺症の症状例

 不安
 「座るのもつらく寝ていても布団の中に引きずり込まれる感覚」。東京都の女性会社員(33)は特有の苦しさを明かす。
 昨年1月に感染、2週間で熱は下がったが、けだるさが続いた。トイレに行くのも一苦労、浴室ではシャワーヘッドが持てないほど。在宅勤務しようにもパソコン画面も見られない。後遺症患者らを多く診るヒラハタクリニック(東京)で、後遺症による「準寝たきり」状態と診断された。
 復職するたび体調を崩し休職期間は計8カ月以上に。勤務先の理解もあり、復職後も週2回早退して治療に通う。会社には感謝しているが「本当はどう思われているのか」との不安も抱える。
 生活設計が見通せない患者も。神奈川県内の病院を休職中の40代の男性看護師は「光が見えない」と訴える。2020年12月に発症。呼吸不全などが残り、現在は労災保険の給付を受けている。
 発症時、病棟にはコロナ患者が入院していたが、「院内感染の可能性は低い」とする病院側から労災申請への協力は得られなかった。自ら申請したが、認定されるまでの約半年間は収入源が一切なくなり経済的に困窮。現在も病院側からの生活支援は何もなく、協議は平行線のままだ。
 もや
 聖マリアンナ医科大病院(川崎市)の後遺症外来ではソーシャルワーカーのチームが患者約80人の相談を受けてきた。3月末まで責任者を務めた桑島規夫さん(46)は、相談の内容は就労関連が圧倒的に多いとし、復職には会社の理解が不可欠と指摘する。
 患者の特徴として、倦怠感のほか頭にもやがかかったようになるブレーンフォグの症状がある人が多いと解説し、「書類を書くのも大変なので、手助けする人は絶対に必要」と話す。自身も後遺症外来の医師とともに、商工会議所で講演するなどして説明してきたと強調。社会にコロナ禍を忘れたいとの雰囲気があるとし、「後遺症で長く苦しむ患者がいることを忘れないで」と訴えた。
 後遺症患者への国の対策は遅れも指摘されていたが、コロナの分類が5類に移行する5月8日からは診療報酬を加算するなど強化される方針だ。
 こうした中、職場復帰や再就職支援などに取り組む自治体も。東京都世田谷区は一昨年、区民を対象に2度にわたって後遺症に関する独自調査を実施した。仕事の不安を抱える人が多いとして、労働相談窓口などと連携し、社会保険労務士らの助言が受けられるサポートを行っているという。世田谷保健所の高橋千香感染症対策課長は「後遺症は実態が理解されていない。今後も支援を続けていきたい」と話した。

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