衆参5補選 選挙協力で自公きしみ 衆院10増10減巡り確執【大型サイド】

 衆参5補欠選挙を目前にして、自民党と公明党の間にきしみが生じている。公明による自民候補の推薦決定は、参院大分選挙区補選告示の3日前というぎりぎりのタイミング。衆院小選挙区「10増10減」調整の確執が響いた。自公の選挙連携には不安が残る。

衆参5補選を巡る自公の構図
衆参5補選を巡る自公の構図

 ▽直談判
 「何とか推薦をお願いできないでしょうか」
 2日。公明の支持母体・創価学会の最高幹部に、茨城県のゴルフ場にいた岸田文雄首相から突如電話が入った。首相は5補選の支援を低姿勢で頼み込む。これを受けて3日昼、公明は持ち回りの中央幹事会で自民候補の推薦をようやく決めた。
 国政補選で公明は通常、与党統一候補として自民候補に推薦を出す。自民は2月中に衆院補選4候補を公認し、最も遅かった参院大分も3月16日に公認決定済み。その大分補選は今週6日に告示が迫り、残る衆院4補選の告示は11日。ずれ込んだ背景には、衆院10増10減を巡る自公のぎくしゃくした関係があった。
 公明は1月以降、定数が増える東京、埼玉、愛知の3都県の選挙区で、自民との調整を待たずに自前の候補を決めて公表した経緯がある。自民の地方組織は反発。公明は表向き「補選対応とは無関係」との立場を取るが、創価学会内には「補選の推薦を盾に、自民に譲歩を迫るべきだ」(幹部)と強気の声があり、膠着状態に陥っていた。
 岸田政権は安倍、菅両政権に比べて「自公の意思疎通がスムーズにいっていない」(公明関係者)と言われる。衆参5補選対応は首相の「直談判」で決着したものの、候補者のポスターは既に発注済みで「公明推薦」と印刷できないなど影響は避けられないようだ。
 ▽熱量に差
 公明には衆参5補選に集中できない事情もある。
 5補選は統一地方選の後半戦と同じ4月23日投開票。組織力を強みとする公明は、地方選を国政選と同等に重視する。今回の統一地方選も前半、後半合わせて1555人の公認候補の全員当選を目指している。
 つまり「公認候補を一人も落とせない地方選で精いっぱい。自民応援という衆参補選に同じ熱量は割けない」(公明関係者)というわけだ。公明選対筋は「実際の補選応援も限定的にせざるを得ない」と語る。
 ▽いらいら
 自民にはいらいらが募る。参院幹部は「10増10減で増える衆院の選挙区が欲しくて、自民を脅そうというんだろう。公明が候補を立てても自民の支援なしに当選できないと分かっているのか」と不快感を示す。
 5補選の結果は、首相の政権運営や今後の衆院解散判断にも影響しかねない。選対幹部は「こちらは推薦をもらっている方だ。遅いも早いもない」と不満をのみ込んだ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞