パネル再生、良質ガラスに 太陽光、工芸品にも 大量廃棄見据え装置開発

 使用済みの太陽光パネルをもう一度輝かせたい―。岡山県新見市の企業が、脱炭素化で導入が進むパネルの再資源化に活路を見いだそうと奮闘している。将来の大量廃棄を見据え開発した装置で抽出した再生ガラスは、工芸作家も太鼓判を押す高い品質。関係者からは「廃棄パネルの有効活用につながる」と、期待の声が上がる。

再生ガラスを材料にしたグラスを制作する水口智貴さん=2022年12月、岡山県倉敷市
再生ガラスを材料にしたグラスを制作する水口智貴さん=2022年12月、岡山県倉敷市
廃棄パネルから作ったグラスを見つめる水口智貴さん(左)と佐久本秀行社長=2022年12月、岡山県倉敷市
廃棄パネルから作ったグラスを見つめる水口智貴さん(左)と佐久本秀行社長=2022年12月、岡山県倉敷市
太陽光パネルからガラス工芸品ができるイメージ
太陽光パネルからガラス工芸品ができるイメージ
再生ガラスを材料にしたグラスを制作する水口智貴さん=2022年12月、岡山県倉敷市
廃棄パネルから作ったグラスを見つめる水口智貴さん(左)と佐久本秀行社長=2022年12月、岡山県倉敷市
太陽光パネルからガラス工芸品ができるイメージ

 千度以上の炉で溶かされ、蜂蜜のようになったガラスに筒の先から息を吹き込むと丸く膨らみ、窓から差し込む光にきらめいた。昨年12月下旬、岡山県倉敷市の吹きガラス工房「ぐらすたTOMO」で、工芸作家の水口智貴さん(41)の作品作りが大詰めを迎えていた。
 できあがったのは高さ約8センチ、口径約7センチのグラス。「透明度は十分。気泡が入り、レトロな味がある。ランプシェードやオブジェにしてもいいかも」。材料は廃棄された太陽光パネル。水口さんは「再生ガラスという素材が作品のアピールポイントになる」と語る。
 装置を開発した「新見ソーラーカンパニー」(同県新見市)の佐久本秀行社長(47)は「濁りが出ないか心配していたが、すごくきれい」。工芸用に使いやすいよう改良を加え、ガラス工房への販売を模索するという。
 2011年の東京電力福島第1原発事故後に普及が進んだ太陽光パネルは、「脱炭素社会の実現」をうたう政府が、再生可能エネルギーの主力に据える。22年末には東京都議会が新築一戸建てへの設置を原則義務化する条例を可決するなど、導入は今後も拡大の見込みで、寿命を迎えた廃棄パネルのリサイクル体制の確立が急務だ。
 一般的にパネルは、太陽電池などとガラス板が接着剤で貼り合わせてある。重量の半分以上を占めるガラスは、既に床タイルの原料などとして再利用されているが、環境省の担当者は「ピークの30年代後半から40年代には年間最大80万トンの使用済みパネルが出ると予想されており、再生資源の用途をさらに広げることが必要」と話す。
 佐久本社長の装置は、炉内に置いたパネルを高熱にさらし、接着剤などの有機物を気化させる仕組み。ガラスや銅線といった素材を不純物が少ない状態で分別できるのが特徴だ。佐久本社長は「工芸品に使えるほどの再生ガラスができ、幅広い活用に希望が見えてきた」と胸を張る。
 NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の山下紀明主任研究員は、「パネルの大量廃棄問題は、太陽光発電に関する大きな懸念の一つ」と指摘。「高品質な資源として再活用できる道筋がつけば、再生可能エネルギー導入促進の後押しにもつながる」と語った。

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