女性誌「ハルメク」快進撃 中高年の隠れたニーズ発掘 不況に負けず50万部超え 漫画除き全雑誌で1位

 50代以上の女性向け月刊誌「ハルメク」の販売部数が昨年12月号で50万部を超え、漫画誌を除く全雑誌で1位となった(日本ABC協会調べ)。雑誌不況の中、5年前からほぼ右肩上がりの快進撃。読者自身も自覚しないニーズを掘り起こす編集姿勢が勝因のようだ。

「便利で役立つだけでなく、誌面を通して寂しさや孤独、不安などへのサポートができたら」と話す「ハルメク」編集長の山岡朝子さん
「便利で役立つだけでなく、誌面を通して寂しさや孤独、不安などへのサポートができたら」と話す「ハルメク」編集長の山岡朝子さん
「便利で役立つだけでなく、誌面を通して寂しさや孤独、不安などへのサポートができたら」と話す「ハルメク」編集長の山岡朝子さん
「便利で役立つだけでなく、誌面を通して寂しさや孤独、不安などへのサポートができたら」と話す「ハルメク」編集長の山岡朝子さん
女性誌「ハルメク」2月号。約200ページの本誌(右)と通販カタログ2誌がセットで定期購読者に届く
女性誌「ハルメク」2月号。約200ページの本誌(右)と通販カタログ2誌がセットで定期購読者に届く
主要雑誌1号当たりの販売部数の推移
主要雑誌1号当たりの販売部数の推移
「便利で役立つだけでなく、誌面を通して寂しさや孤独、不安などへのサポートができたら」と話す「ハルメク」編集長の山岡朝子さん
「便利で役立つだけでなく、誌面を通して寂しさや孤独、不安などへのサポートができたら」と話す「ハルメク」編集長の山岡朝子さん
女性誌「ハルメク」2月号。約200ページの本誌(右)と通販カタログ2誌がセットで定期購読者に届く
主要雑誌1号当たりの販売部数の推移

 「ネット活用、これさえできれば便利・楽しい・損しない!」「ハルメク世代の髪にいいこと全部!」。健康、美容からお金まで幅広く扱う同誌の最近の特集だ。奇をてらわない、他誌にもありそうな内容だが、読者の支持は厚い。「毎号必ず気になる特集がある。節約がテーマでも、なんとなく楽しくなる内容がうれしい」と東京都に住む小笠原早苗さん(69)。10年来の読者だ。
 書店を通さず読者に直送する定期購読月刊誌として1996年創刊した「いきいき」が前身。部数が低迷していた2016年に現誌名に変更した。翌17年、主婦と生活社で女性誌の編集長を歴任した山岡朝子さん(48)が編集長に就任した後、躍進が始まった。「雑誌作りで大切なのは読者を知り、寄り添うこと」と山岡さん。その好例がスマートフォンの特集だ。
 シニア女性はスマホが苦手だろうとは誰もが思い付くが、違うのはその先。約4千人のモニター組織を活用し、実際に操作してもらい事例を収集。多くの人がつまずくのは基本操作の「タップ」で、その理由は指の力加減にあると突き止めた。
 「モニターの皆さんは、タップができないという自覚すらないまま『なんとなく、うまくいかない』と感じていた。分からないってそういうこと。悩みを言葉にし、解きほぐし、解決法を誌面で提示する。それができて初めて『買って良かった』と思ってもらえる」
 「リアルな読者像の構築」を支えるのが、山岡さんが「宝の山」と呼ぶ独自のシンクタンク「生きかた上手研究所」だ。読者の意識やその背景、毎号の感想をアンケートなどで継続調査しており、出版科学研究所の水野敦史研究員は、調査と誌面を有機的に連動させた「きめ細かい努力の積み重ねが勝因」とみる。
 「従来の雑誌と方針が逆」と言うのは、出版業界に詳しいフリーライター永江朗さん。他誌のように最先端の情報や流行を提案するのではなく、読者自身も気づかないニーズをすくい上げ、インターネットで調べられる情報であっても「タップの力加減は指の腹でゴマを1粒拾い上げるくらい」などと独特の表現でかみ砕き、丁寧に伝える。
 永江さんは「最先端ではない、分かりやすい実用情報を求めている人は実はサイレントマジョリティー(物言わぬ多数派)。雑誌の広告主も軽んじてきたそんな人々に、ハルメクが光を当てている」と話している。

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