かんたん自然遊び【夏】キュウリ、ナス 先祖の霊運ぶ馬と牛(山田辰美/常葉大名誉教授)

 今月はこの時期ならではのお盆のクラフトを紹介します。先祖の霊のためにお墓参りや迎え火、精霊流しなど、地域ごとに独特の風習が見られます。子どもに「お盆はご先祖様が家に帰ってくるのよ」と話しながら、身近な夏野菜で「おしょろ様」と呼ぶ馬と牛を作りましょう。

平らな石で作った祭壇とおしょろ様。花や供え物でお見送り=藤枝市
平らな石で作った祭壇とおしょろ様。花や供え物でお見送り=藤枝市
平らな石で作った祭壇とおしょろ様。花や供え物でお見送り=藤枝市

 正式には精霊馬[しょうりょううま]、精霊牛[しょうりょううし]と呼び、2頭セットで盆棚や仏壇、玄関先などに飾ります。動物にまたがり、海のかなたにある黄泉[よみ]の国から川をさかのぼって来るのだと祖父母に教えられました。あの世から早く帰れるように馬でお迎えし、戻る時は牛に荷物をたくさん載せてゆっくり送り出すのだと言い伝えられる地方が多いようです。このような愉快なお話や工作は、見えない霊を子どもに感じさせるための方便だったと思います。
 私が住む地域では盆棚などに飾った2頭のおしょろ様は身近な川岸に平らな石を並べて作った祭壇に連れて行かれました。ここで供物など最後のもてなしと家族の見送りを受け、再びあの世に旅立つのです。
 馬はキュウリ、牛はナスで作ります。家庭菜園では曲がったり太く育ちすぎたりした「ヘボ」と呼ぶ野菜が採れます。ヘボの方が動物らしさや動きが表現できますが買う場合は太めがお勧めです。
 足は昔から皮をむいた麻の茎「おがら」を用いますが、割り箸でOK。目は小豆や黒豆、尻尾はトウモロコシのひげ、角やくらはインゲンマメが定番です。耳は庭にある南天の葉を使いました。
 人以外のものに命や心の存在を感じ、擬人化する感性は特に子どもに強いようです。妖怪に代表される霊的な世界観は現代っ子も大好きです。おしょろ様作りもきっと喜ぶと思います。(常葉大名誉教授=藤枝市)

 ■作り方と遊び方
 *おしょろ様(伝統的な作り方)
(1)キュウリとナスを選び牛はヘタ側を頭にする。
(2)足に使うおがらか割り箸を適度な長さに切り片方の先をとがらせる。
(3)足は初めは浅く刺し、4本のバランスを取った後、深く刺す。(4)目に使う豆、耳の葉、尻尾のトウモロコシのひげ(無ければエノコログサ)を胴に刺す。
<リアリティーを上げる工夫>
 ▽キュウリの端を5センチ程度切り、馬の頭部を別にすると馬らしさが増す(つまようじで胴とつなぐ)。
 ▽インゲンマメの先を牛の角に。頭につまようじで刺す。曲げて両端を固定すれば馬のくらになる。

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