「想定高よりずっと高い設計に」南海トラフ地震では浸水の恐れも 津波に備えて病院の設備強化 災害時に医療を継続するために【わたしの防災】

2024年元日に発生した能登半島地震では、インフラが崩壊したことで物資や情報が不足し、医療を継続することが難しい状況でした。静岡県内の病院では、災害医療の体制の強化に力を入れています。

<JCHO桜ヶ丘病院 上野秀幸事務長>
Qどのくらい高さがあるのか
「2階が6メートルくらい、津波の想定高さ2.66メートルよりも、ずいぶん高い設計になっている」

3月1日に開院する「JCHO清水さくら病院」(静岡市清水区)は、海から近く、津波の浸水想定区域にあります。

<上野事務長>
「向こう側から津波がくる想定で、これ(擁壁)で、がれきをカットする設計。東日本大震災では、かなり駐車場にがれきが入り込んで、撤去するのに時間を要したという話もあったので、擁壁をずっと南の面は設置している」

清水さくら病院は、鉄骨造の地上7階建てで、内科や外科など8つの診療科があり、病床数は159床です。診察業務は2階以上で行い、入院フロアは5階以上に設けています。

<上野事務長>
「避難の際の救護スペースになるリハビリ室です」

3階には、災害時の救護スペースとして患者50人の受け入れ機能を確保しました。

<JCHO桜ヶ丘病院 岩崎厚子看護部長>
「重症度が高い方は、ここにベッドを広げる。非常電源、24時間稼働する自家発電とつながっている電源があるので、ここから医療機器の電源をとる。壁に酸素と吸引が内蔵されているので、ここからチューブを引きながらベッドで看護、治療、ケアをする形を考えている」

災害時に医療を継続するために欠かせないのが、インフラ対策です。屋上にある自家発電装置は停電時に30秒で起動し、院内の医療機器などに電力を供給します。また、一般的に地下にある電気設備などは3階以上に配置し、浸水した時でも診療ができるよう設計されています。

さらに、浸水時の孤立を想定し、ヘリコプターから物資を投下できるスペースも設けました。

<上野事務長>
「単に診療をするだけではなく、地域の皆さんに防災の観点から安心していただけるような病院を目指していきたい」

病院設備の災害対策が進められる一方、2024年の能登半島地震で浮き彫りになったのは、災害医療における地域連携の難しさです。2月18日、静岡赤十字病院(静岡市葵区)に集まったのは、静岡県内の災害拠点病院や警察・消防、自治体の関係者です。

<静岡赤十字病院 小川潤院長>
「現地のニーズを把握しきれないまま行ってしまって、結局無駄足になってしまったり、現地の方の足手まといになってしまったり、やはり情報共有がなされていなかったのではないかと思う」

静岡県では、能登半島地震で災害派遣医療チームDMATとしてあわせて200人以上を病院や避難所などに派遣しましたが、インフラの崩壊により、現地の状況把握が課題となりました。

そこで、県では、病院や警察・消防、自治体の三者で大地震を想定した図上訓練を行い、あらためて指揮命令系統や初動体制を確認しています。

<小川院長>
「地域連携に1番大切なものは、正確な情報の把握と、その情報共有に尽きるのではないかと思う」

南海トラフ巨大地震では、浸水が想定される医療機関も多く、交通アクセスも悪化するとされています。病院では、1週間程度は入院患者や職員が院内に居続けられる体制を整え、支援がすぐには届かない前提での備えを進める必要があります。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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