「SNSではできないツール」住民有志らが手作り 高齢化が進む町 新聞で未来を前向きに=旧蒲原町(静岡市清水区)【現場から、】

静岡市清水区の旧蒲原町で、住民などの有志が地元の話題を盛り込んだ新聞を創刊しました。少子高齢化が進む町で紙面を通して届けたいと願うのは「前向きな未来」です。

<大澤康正さん>
「おはようございます。この前相談していたやつで、新しいのできたので」

東海道の宿場町として栄え、当時の名残がある静岡市清水区の旧蒲原町。駿河湾に面した人口約1万人のこの地区に2024年、新たな新聞が誕生しました。

<地元の人>
「若い人じゃなくて私たちみたいな高齢者は(新聞が)身近に感じるからすごく楽しみですよ」

月に1度、約4500世帯に無料で配布している「庵原みらい新聞」。蒲原に住む有志らが町の身近な話題やイベントの情報などを記事にして載せています。

<大澤康正さん>
「何かを訴えたいわけではなく、話題提供でしかない。地域の皆さんが面白がって『見た?』とかいいながら会話が増えたり笑えるポイントが増えればいいなと思います」

発起人の大澤康正さん42歳です。長崎県壱岐島生まれの大澤さんは、9年前、家族とともに蒲原に移住しました。夫婦で駄菓子屋を切り盛りするほか、5年前からは、ホステルも経営しています。

<大澤康正さん>
「宿を始めるきっかけもそういう部分だったりするんですけど(蒲原に)外から来た人が会話の中で『すごいいいところだね』とか『街並みがきれい』とか言ってくれることが、地域の人が普段思っていたけど忘れている部分を思い出させてくれる感じがします」

蒲原地区では、約40年にわたり「庵原新聞」が週に1度、発行されていましたが、制作者の高齢化などにより、2024年3月に廃刊しました。

地域に密着した情報を伝える新聞を絶やしたくない。ゼロからのスタートでした。

<フリーライター 中村浩一郎さん>
「(外から来た人に)蒲原の何が褒められているのか。街並みなのよ。軒並み。他にいいことないのかなと」

「庵原みらい新聞」は、大澤さんのほか、蒲原をたびたび訪れるフリーライターなど有志8人で作っています。

<大澤康正さん>
「これこれこれ」「これめっちゃうまかった」「野菜レンコン天」

編集会議では、蒲原出身のメンバーも知らなかった魅力が掘り起こされていきます。

<旧蒲原町出身 塩坂太郎さん>
「蒲原の練り物屋ですか、知らなかった」

<フリーライター 中村浩一郎さん>
「こういうのをみんなにも食べてもらいたいよね」

新聞の発行には、4万円ほどの印刷費がかかり、現在は、地元企業などの広告料で賄っています。出来上がった新聞は、地域のボランティアらと1週間ほどかけて手作業で配ります。

大澤さんは今後、新聞の発行を事業化していきたいと考えています。

<地元の人>
「庵原新聞が無くなってつまらない。助かりますね。身近なことがわかるから」

<大澤康正さん>
「地域の誰かって分かったり、知らなかったけどこの人はこういうことをやっているんだっていうのがちゃんとご近所とか、地区内にいることが分かって、それが面白そうって思ってもらえるのは、SNSではできないと思うので、そういったことを面白がれるツールとして媒体がうまく軌道に乗るといいなと思っています」

蒲原地区の人口は若い世代の流出が顕著で、10年前と比べ、約1割減っています。少子高齢化が目立つ町で、幅広い世代に情報を発信したい。大澤さんの思いです。

大沢さんは、ホテルの経営などを通じて、蒲原を訪れる人との交流から街並みや産業、人とのつながりが魅力だと再認識したと言います。今、簡単に情報を検索できる時代に、調べても出てこない、より身近な情報や話題を届けるという取り組みです。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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