2024年の能登半島地震では福祉施設も被害を受け、避難した高齢者たちは地元に思うように帰れていないことが分かってきました。地形的に似ている静岡県の伊豆半島ではどう備えるべきか、能登の事例を学ぶ研修会が開かれました。
<佛教大学 後藤至功講師>
「道の崩壊っていうのが今回すごくやっぱり多くて(被災地の)中に入るのも困難性がどっと上がりました。ここもなんとか道を、北上するための道を先に作るんですね。8月ぐらいになって、ようやく折り返しっていうのができて、輪島からなんとか降りていくことができるようになりました」
能登半島地震の発生直後から、福祉施設の支援に取り組んだ佛教大学の後藤至功さんです。能登の福祉施設や介護施設がどんな状況に向き合ったのか。伊豆半島にある介護施設の職員などの研修会で紹介しました。
<佛教大学 後藤至功講師>
「頑張ってね、なんとかやられた施設さんもありますけれども、なかなかやっぱり難しかったです。『12重苦』って書いてます。ライフラインでは、停電、断水、通信不良、いろいろありました」
強い揺れと津波でライフラインが被害を受け、寒さ厳しい中、道路の復旧も、施設の復旧も思うように進まない。上下水道が長く止まり、入浴など衛生ケアもままならないなど、困難に困難が重なりました。
研修参加者は、能登の実情を聞き自分の施設の備えがまだ十分でないと感じていました。
<男性>
「1週間は、全然水が来ない可能性もやっぱ高いのかなっていうところと、今先生も言ってましたけど、下水が今でもまだ整ってないていう話があったので。やはり携帯トイレとかトイレ周り、排水周りはやはり何かしら手を入れなきゃいけないのかな」
<女性>
「電気もガスも止まる状況を考えて。燃やせるものというかカセットコンロだとか。そいうものを準備しておきたいなっていうのすごい感じました。」
災害初動から始まった福祉施設の課題は「避難」に移りました。
<佛教大学 後藤至功講師>
「今回の地震の1つの大きな特徴は、1.5次避難所っていうのが設けられたっていうことです。1次があって、1.5次があって、2次っていうのがあります。1.5次ってどういうことかって言ったら広域避難なんですね。この1.5次っていうのがですね、今後、いろんな各地で災害あった時に、スタンダードになっていくんじゃないかって言われてる1つの大きなハブ(中継地)になります」
今回の地震で石川県が進めて注目されたのが「広域避難」。
高齢や持病があるなど配慮が必要な人の体調を守るため、住み慣れた奥能登を離れ、金沢市など被災地の外にある施設に一旦、身を寄せる「1.5次避難所」を設けました。
1.5次を中継地点に、ホテルや旅館などの「2次避難所」に移っていく『広域避難』を進めたのです。後藤さんは、広域避難が命や健康を守ろうとした役割を評価する一方、被災地に困った状況を起こしていると指摘します。
<佛教大学 後藤至功講師>
「(介護職員が)1.5次に避難したらもう帰ってこないんですよ。そういう状況になるから、ここにどう手を打つのかっていうことをしとかないと、結果として在宅サービスが閉業になってしまって、高齢者の人が戻れないっていう現状が今起こってるっていうことです。これは大いに伊豆半島の中でも考えておいてほしいなっていうことです」
介護を担ってきた職員や、サービス利用者の高齢者が広域避難先から能登に戻らないケースが増え、介護事業所の経営が成り立たなくなって休業や廃止が相次いでいるといいます。
生活を支えていた福祉サービスが無くなるとお年寄りが地元に帰りたくても帰れないという状況が起きているのです。
<男性>
「1.5次避難所の話で、やはり利用者さんがみんな避難してしまうと事業継続、再開につながることがちょっと困難になるという話だった。特にうちデイサービスも、ショートステイも、ホームヘルプもやってるので。その辺をどういう風に再開に持っていくか」
<佛教大学 後藤至功講師>
「1.5次避難に避難した後、また2次避難に避難した後。その後の出口戦略をどうするかっていうことを、私は能登半島地震の場合はしっかり考えられてなかったんじゃないかなと思います。もし静岡で起こった場合ですね。この1.5次、2次避難の後どのように生活再建含めて出口づくりをしていくのかっていうことは、しっかり検討しといて欲しいなという風に思います」
今回の研修会で講師の後藤さんが最も強く訴えていたのは、能登では避難先から戻った後の生活をどう立て直すのかという出口戦略が不足していたことです。
福祉や介護の事業者が被災後も地元で事業を続けていける仕組みを、静岡県は今から検討しておく必要があるようです。