「考え方はマイナーリーグ 満足してもらっちゃいけない」くふうハヤテ池田省吾社長 「育成」し「再生」し「勝利」にもこだわる

66年ぶりに誕生したNPBプロ野球球団「くふうハヤテベンチャーズ静岡」。すべてがゼロからのスタートとなった球団運営を一手に取り仕切ったのが、池田省吾球団社長(50)だ。怒とうの1年間を振り返るとともに、来たる新シーズンへの思いを聞いた。(SBSアナウンサー 松下晴輝)

松下晴輝アナウンサー:シーズンが終わって、2か月と少し経った。シーズンオフも変わらず、忙しくしていると伺っているが、現在はどのように動いているのか。

池田省吾球団社長:シーズンを無事に終了したので、挨拶回りが中心になっている。あとは新しい選手を獲得、契約している段階でもあるので、両方忙しくさせていただいている。

松下:あいさつ回りをして、各市や町の反応はどうか

池田:試合を開催させていただいたというのもあるが、「やっと球団ができた」というのを間違いなく認知していただいているかなと思っている。来シーズンはそこから、市民や県民の皆さんにもっと知っていただき、球場に来ていただけることをやっていかないといけないと実感している。

松下:今シーズンは、ちゅ~るスタジアム清水、草薙球場、浜松球場、あしたか球場でそれぞれ試合を行ったが、東西に長い静岡県の野球熱は感じられたか

池田:野球熱は本当に感じた。西に行っても、東に行っても、変わらない声援をいただいた。(球団社長に就任して、静岡に)来てみて思ったが、静岡県は「サッカーの街」って世の中では言われているかもしれないが、ベースは「野球の街」で、非常に野球に対する熱量、思いが高い地域だと感じている。

松下:例えば西だと、浜松出身の池谷蒼大投手、東だと、河津町出身の竹内奎人投手など、それぞれの地域に縁がある選手がチームに名を連ねていることも追い風になったか

池田:地元の選手がいるのは、応援しやすい環境だと思う。

同じ勝ち星では絶対いけない

松下:シーズン成績を振り返ると、初年度は28勝という成績だった。首位のチームとは40ゲームほど、5位のチームとも20ゲーム以上差をつけられての最下位に終わった。球団社長としてはどのように考えているか。

池田:想定内といえば、想定内。ウチはゼロからなので、元NPB選手も福田秀平選手、田中健二朗選手、倉本寿彦選手と超一流の選手が入ってくれたが、とはいえ、7割からぐらいの選手が初めてファームリーグで戦い抜くという中で、そんなに勝てると思ってなかった。ウチは育成して、再生しながら、勝っていくことを大前提として挙げている中で、チームは(シーズン)後半強くなっているイメージがあった。ファンの皆さんを満足させる試合ができたかというところは、ちょっとまた別問題だが、健闘していたというふうには思う。

松下:1年目28勝にとどまった課題としてはどの辺りがあるか

池田:チーム力が圧倒的に、できたばかりのチームなので、(他チームと比べて)劣っていた。ピッチャーなら精度を上げていかないといけない。150キロ投げるピッチャーはウチにも何人かいるが、精度の問題が出てくる。バッターもいい打者はいるが、パワーが足りなかったり、確率が低くかったり、スピードが足りない野手がいた。守備力の面もそうだが、そこを全体的に底上げしていくことが大事。そこは個々の課題になってくるので、来季に関しては、毎月面談してどこを伸ばしていくかという点も取り組んでいきたい

松下:1年目のシーズンでの収穫を挙げるとすればどこになるか。

池田:収穫は「育成して再生して、勝っていく」ところの「育成」と「再生」の両方を、目標として達成できたところはチームとしては収穫かなと思う。移籍で西濱(勇星)投手がヤクルトに移籍したし、ドラフトで早川(太貴)投手が阪神にドラフト指名されたので、そこは一番の収穫だと思っている。

この数字をや最低目標として「育成1、再生1」をクリアして、さらに上積みしていくことを目指したいし、来シーズンはさらに勝ちにこだわっていきたい。半分の選手が残っているので、(今季と)同じようなスタートではない、ということから逆算すると同じ勝ち星では絶対いけない。さらに、そこの中に勝ちにこだわっていくようにやっていきたい。

来季の戦力は

松下:いま、話を聞いているのが12月上旬(12月9日取材)で、新入団選手の発表等は公式にはされていない段階であるが、来シーズンに向けて戦力の補強は進んでいるか

池田:編成は着々と進んでいて、おそらく12月の2週目か、3週目には内定の発表をさせていただこうと思っている。しっかり補強していて、来シーズンは戦えるチームが作れているかと思う。春のキャンプを迎えるのが楽しみな選手たちに集まってもらっているなという感じ。

松下:来季に向けた補強も元NPBの選手+アマチュアの選手という感じか。

池田:あと、外国人も検討するが、いまのところは、元NPB選手や元独立リーガー。大学生や高校生も来るので、楽しみにしていただきたい。また、地域もある程度意識した補強もしているの、で楽しみいただけるとうれしい。

松下:静岡関係者には声をかけているか

池田:トライアウトでも気づいていただいたと思うが、(静岡関係者が)受けに来てもらえるようになったのでそこがありがたい

チームは、12月16日に全19選手の新入団を発表した。最大の注目は地元・静岡高校出身、昨季まで西武でプレーした鈴木将平外野手(26)。さらに元巨人の笠島尚樹投手、元ソフトバンクの佐藤宏樹投手のNPB組も加入する。

松下:「育成して、再生して勝つ」は来季も継続か

池田:ここは継続、さらに勝ちにこだわっていく、そこは監督やコーチ、首脳陣とも話をしている。当然育成して、再生していかないといけないが、さらに勝ちにこだわるというゲームをお見せできれば。

松下:ちなみに赤堀監督は来シーズンもいらっしゃるのか。

池田:口頭で合意はしていて、最後、契約書を交わすところ。基本的には継続。

選手のバス移動を続けていく

松下:球団の経営面、経営戦略についても伺いたい。まず、今季の観客動員について。開幕3連戦は非常に多く観客が入ったが、それをも上回る観客がシーズン終盤に向けて集まるようになった。

池田:当初の目標はホーム72試合組まれていたので、1試合平均700人で、シーズンで5万人は集めたいところを最低限の目標として始めた。雨で中止があったりしたが、63試合開催して、1試合平均866人、5万人を超えるお客さんに集まっていただいたというところで、最低限の目標はクリアできたかなと思っている。

開幕戦は1,600人ぐらいだったが、最終戦は2,300人と多くの観客に集まっていただけた。認知活動がうまくできていなかった中、シーズンを通して徐々に野球ファンに、街のみなさんに注目していただき、球場に応援に行こうかなというふうに思っていただき、最後集まっていただいたと思う。来季はそこももっと伸ばしていきたい。

松下:施策のひとつが県民無料招待だったと思う。草薙球場で行われた巨人戦にはたくさんの人が集まったが、来季も県民デーは行うのか。

池田:今シーズンの県民デーは静岡県との連携事業だったが、また、県とは話し合っていきたいと思うし、また、静岡市とかそれぞれで試合がある球場の自治体とは、相談していきたいと思う。まずは一度でも試合を観に来ていただくことが大事だと思っているので、無料開放というよりは、各試合枠を設けて招待させていただくというような活動は来シーズンもやっていきたい。

松下:県民デーへの手ごたえは

池田:告知する方法があまり強くなくて、自分たちのSNS、ホームページでしか募集告知ができないので、どうかなと思ったが、それでもやっぱり1日、2日で(募集枠が)埋まる。5,000人の枠が一週間に埋まる。そういう意味では、野球ファンに少しずつ浸透してきてるんだなというのは実感している。告知の方法などは考えながらやらなければいけないが、またやれば、絶対来ていただけるというところはあるかなと思う

松下:ファンとの関わりという部分では、清水の駅前商店街で行ったファン感謝デーには約300人のファンの方に集まって交流していた。新球団にとってファンの存在は

池田:本当にありがたかった。もう毎回来ていただくファンがたくさんいて、いつも叱咤激励いただいて、ファン感謝デーは300人となっていたが、のべでいうともっと来ていただいた。ファンに支えられて今シーズン戦ったんだなっていうのをファン感謝デーで実感した。こういったファンをさらにもっと増やしていかないといけないとさらに思った

松下:老若男女、幅広いファン層がいると感じた

池田:年齢層は本当にバラエティ豊かにいつも球場に来ていただけるので、野球熱は本当に高い。子どもが少ない点は気になっているが、決して観に行きたくないわけではなくて、野球をやっている子は土、日に(所属するチームで)試合しているから来れなかったと思うので、来季はナイターが増えるので、観に来ていただけるのではないか。

松下:スポンサーはプロ野球の球団経営としては大きな部分になると思う。池田球団社長自ら営業活動されている姿も多く目にしてきたが、現状での手応えは

池田:今季は約15社に協賛いただいたが、立ち上げながら、試合運営をしながら、同時進行でやっていたので、うまく営業できなかったところもあるし、(球団が)立ち上がるまで「本当に立ち上がるのか」というに疑いの目で見られていたところもあるので、やっと「本当にできたんだね」と分かっていただきながらの営業スタイルだった。

いまは営業は専任担当がいて、どんどん回っているが手ごたえはある。本当に少しでも多くのみなさんに応援いただけるように、協賛いただけるように努力していく。来季に向けては、そこを増やしてかないといけないと思っている。

松下:資金面という面では、今シーズン、選手の移動はバスだった。12球団の選手だと飛行機や新幹線での移動だが、「広島までバスで行きました」みたいな話を選手が笑いながらしていたのが印象的だったが、来季はどうか

池田:そこは変わらない。ウチは大前提として、育成して、再生していくチーム、考え方としてはアメリカのマイナーリーグ、2Aや1Aぐらいのところ。ウチで満足してもらっちゃいけない、とにかく1日でも早く、セ・パに戻ってもらわなきゃいけないチームなので、経営との両立という意味合いもあるが、そこは厳しい環境でやっていきたい。やらざるを得ない部分もあるが、そこは変わらず、選手には厳しい環境になるが、バス移動を続けていく

「校外授業の試合には必ず観に行く」

松下:若い層という意味では、今季は高校生や大学生など、学校とのコラボをたくさんされた。ここは球団の特色と感じる

池田:富士市立高校の吹奏楽部やビジネス探求科が授業で球団を手伝ってくれたりとか、パフォーマンスや応援演奏を披露いただくなど、コラボさせていただいたが、来季以降もやっていきたい。僕らは、地域を巻き込んでいきたいし、地域の皆さんに引っ張っていただく応援スタイルにしたい。まさにそういうことを体現していただける学校。それ以外にも何校もコラボさせていただいた。さらに、これからいろいろ取り組んでいく可能性がある高校もあるので、どんどん(球団に)入り込んで頂きながら、球団を育てていただきたいという考えで取り組ませてもらっている。

松下:静岡県立大学での授業を見させていただいたが、いいアイデアは出たか

池田:出た。めちゃくちゃいいアイデアが出た。例えば、エスパルスさんは毎年、選手の顔写真入りの下敷きを静岡市内の小学校に配っていらっしゃる。「小学生の時に下敷きを見た、よくわかんないけど、試合に観に行ったこともない選手の名前をずっと覚えている」と女子学生が言い出して、そういう方法もあるんじゃないかとか、「無料招待したけど小学生がなかなか来てくれなかった」という話をしたら「いや、違う」と。試合観戦を授業にして、必ず来る校外学習として来てもらう方法を使ってもいいんじゃないかと。磐田出身の子がいて「学校で、ジュビロの試合には必ず観に行く」と。「なるほど!」と思った。

予算もなく、大プロジェクトではないが、こういう事をしっかりやっていけば、エスパルスさんやジュビロさんのように浸透していくんだなということがよくわかった。大きな収穫だった。いろんなアイデアをいただいたので、ご一緒できればいいし、自分達だけで考えるよりも、大学生などに入り込んでもらい、やっていくと面白いことが出てくるなと思うので、このスタイルは続けていきたい。

松下:実際にそれを体感して育ってきている子達の意見だ

池田:競技関係ない。さらに野球が増えたんで、野球を1回観に行こうみたいな空気がつくれればいいな、というところのアイデアをいっぱいいただいた。

松下:来シーズンに向けてファンへのメッセージを

池田:今シーズン一年間ご支援、ご声援ありがとうございました。本当に立ち上がったばかりの球団を支えていただきましてありがとうございます。まだまだ、戦いは続きます。3月には新しいシーズンが開幕しますので、ぜひ球場に来て熱い声援を送ってください。よろしくお願いします。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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