「防災にまつわる記念日」から考える“周年”報道の大切さ「能登半島地震1年」「阪神・淡路大震災30年」

2025年1月1日「能登半島地震」の発生から1年となった。高齢化と過疎化が進む中、9月には豪雨災害にも見舞われ、復旧・復興はなかなか進んでいない。

阪神・淡路大震災

2025年は「阪神・淡路大震災」から30年の節目の年にもあたる。1995年1月17日早朝、神戸の街をはじめ、関西地方を襲ったM7.3の兵庫県南部地震では、6400人を超える人が犠牲になった。住宅の耐震化や家具の固定、ボランティアの大切さなど、多くの教訓を残した。

こうした「防災にまつわる記念日」の前後には、関連した報道が集中し「周年報道」「カレンダージャーナリズム」などと言われることがある。普段とは報道のボリュームに大きな違いがあり、批判されることもある。しかし、被害にあった方々に寄り添い、お話を伺い、災害を忘れず教訓とすることには意義がある。

“周年”報道は、災害の発生から時間が経つとともに数は減っていくとされている。一方で「同じ災害は2つとない」と言われるほど、災害には様々な特徴がある。過去の様々な災害を思い出し、多くの教訓を得て、備えることは、防災対策の基本として大切なことだ。

「新潟地震60年」「新潟県中越地震20年」

新潟県中越地震

2024年は、新潟県にとって地震災害に関する“周年”の年だった。「新潟地震(1964年6月)」から60年、「新潟県中越地震(2004年10月)」から20年となり「日本地震学会」や「日本災害情報学会」といった研究者が集まる学会が新潟県で相次いで開催された。

11月の「日本災害情報学会」では「新潟地震と現代的意味」と題したシンポジウムも開かれた。研究者たちは、アパート倒壊や液状化など、近代化した都市が初めて経験した災害の特徴を紹介し、被災地のラジオ報道など、災害情報を発信する原点が新潟地震にあったことなどを紹介した。

新潟地震で相次いだ被害の一つに地盤の液状化が挙げられる。2024年1月の「能登半島地震」では、震源から約160km離れた新潟市で、再び液状化の被害が発生した。被害を受けた多くの場所が60年前と重なるという。歴史から学ぶことはたくさんある。

能登半島と良く似た「伊豆半島」50年前の大地震

南伊豆町中木地区

能登半島と地理的な特徴がよく似ている静岡県の「伊豆半島」。今から50年前の1974年5月、M6.9の直下型地震が襲い、南伊豆町で震度5を観測した。「伊豆半島沖地震」だ。地震の揺れと山崩れ、崖崩れで南伊豆町や下田市の海沿いを中心に甚大な被害が発生し、30人が死亡した。

2024年7月、南伊豆町役場で開かれた「伊豆半島沖地震から50年 防災シンポジウム」。パネリストとして登壇した池野玉枝さんは、最も被害が大きかった中木地区に住み、午前8時半すぎ、勤務先の南伊豆町役場で大きな揺れを感じたという。

池野玉枝さん

<池野玉枝さん>
「大きな揺れがあって、すかさず机の下に潜り込みました。職場は金属製の大きなロッカーや書棚がたくさんあるところだったので、よく無事でけがもなかったなと思います」

池野さんは、役場にいたことから情報が早く、実家のある中木地区で火事が起きていることが分った。家族のことが心配になり、同じ地区に住む同僚とともに家を目指した。途中で車を置いて、崩土を何か所も乗り越えながら、地区に入った。

家族は無事だったものの、同じ地区で多くの人が亡くなり、涙なしでは語れない話が沢山あるという。文字では残されていない話があり、語り継いでいきたいと話す。

<池野玉枝さん>
「風化させたくないとか、語り継ぐとかっていうことには私もすごい賛成。だんだん記憶が薄れてくるのは、その時の恐怖心も薄れてくること。本当に災害は恐ろしいし、悲しい気持ちを50年経っても持っている人がたくさんいる。できることを少しずつやるという意味で区切りは大切」

9月1日「防災の日」に“猛暑”で訓練ができない!?

静岡県総合防災訓練

9月1日は「防災の日」。2023年で100年の節目を迎えた「関東大震災(1923年)」にちなんだ記念日だ。震災を教訓に広く国民が災害についての認識を深め、備えようと1960年の閣議決定で定められた。「防災の日」前後の8月30日から9月5日までは、国の「防災週間」とされ、全国各地で防災訓練などが行われている。

長年、東海地震に備えてきた静岡県でも、毎年9月1日の「防災の日」に合わせ、大規模な「総合防災訓練」を実施し、関係機関の連携や対応を確認してきた。その「総合防災訓練」を2025年は「10月19日」に行う予定だと静岡県が発表した。理由は“猛暑”。近年9月でも猛暑が続く状況を踏まえ、訓練参加者の健康に配慮したという。

静岡県内では12月第一日曜日にも規模の大きな防災訓練を実施している。地域の住民が主体となって訓練を行う「地域防災の日」だ。こちらは、前回の「南海トラフ地震」にあたる80年前の「東南海地震(1944年12月7日)」を教訓に1986年に定められた。次の「南海トラフ地震」に住民がどう対応するのか、確認することが目的だ。

猛暑の影響で、9月1日「防災の日」に訓練ができないのは仕方がないこと。10月の訓練でどんな災害を教訓とするのか、過去の災害をいま一度振り返り、学ぶ機会としたい。

「伊豆半島沖地震から50年 防災シンポジウム」南伊豆町(2024年7月)
南伊豆町中木地区の慰霊碑

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

人気記事ランキング

ライターから記事を探す

エリアの記事を探す

stat_1