9月26日、いわゆる「袴田事件」の再審判決が静岡地方裁判所で言い渡されます。死刑囚・袴田巖さん(88)を支える姉のひで子さん(91)は58年間、弟の無実を信じ続けてきました。

今年で91歳になったひで子さん。58年間にわたって、弟・巖さんの無実を訴え続けてきました。巖さんは6人兄弟の末っ子。3歳年上の姉がひで子さんです。
<袴田さんの姉 ひで子さん>
「小さい時はね、かわいらしいね、おとなしい子だった。おしゃべりでなくて寡黙な人間で」
ひで子さんが33歳の時、袴田家の生活は一変します。

1966年6月30日、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、警察は当時30歳の袴田さんを逮捕。袴田さんは裁判で無実を訴え続けるも1980年、死刑が確定しました。
「神さま!僕は犯人ではありません」
袴田さんは、なおも無罪を訴え続けましたが、収監が20年をこえたころから、死刑の恐怖に晒され続けた袴田さんの手紙には、「悪魔」や「電波」、「神」といった言葉が目立つようになり、家族に宛てた手紙は支離滅裂なものとなり、中には、平仮名ばかりのものもありました。
「自分に姉はいない」とひで子さんとの面会も拒否。それでも、ひで子さんは拘置所に通い続けました。

<袴田ひで子さん>
「面会はやっぱりダメでした。嫌だってことらしくて、会えないから来ないってわけにはいかんからね。会えるまで来たいと思う」
記者「いま、袴田元被告が出てきました」
逮捕から48年が経った2014年、静岡地裁は、裁判のやり直しを認め、袴田さんを釈放しました。ようやく手にしたきょうだいの生活。しかし、自宅でくつろぐ瞬間も袴田さんは死刑囚のままです。

2023年から始まったやり直しの裁判。不安定な精神状態が続く袴田さんに代わって、ひで子さんが法廷に立ち、弟の無実を訴えました。そして、9月26日、判決が言い渡されます。
<袴田さんの姉 ひで子さん>
「弟は無実だってことは信じていましたからね、これだけできました。かわいいとは思わんが、やっぱり弟だで。当日まではこの平常心でいられると思う。私はもう開き直っているから」