まだ暑さが残る中、大人ののどを潤す新たなビールが浜松市で産声を上げました。
原料の1つが浜名湖で大量に発生するカキの殻。ミネラル分が豊富なこのビールは地域の悩みを解消すると期待されています。

「カンパーイ」
9月22日、浜松市の街なかで開かれたランニングのイベント。走った後、参加者にふるまわれたのは、地元で生まれたばかりのクラフトビールです。
<参加者>
「走った後に健康になれるようなビールでした」
「くどくないというか、走った後にはちょうどいいようなビールでした」
ビールの名は「ミネラルブリュー」。
地元・浜名湖のカキの殻が原料に含まれているこのビールには、カキ養殖業者の悩みを解消しようという狙いも込められています。

<八木田牡蠣商店 八木田昇一代表>
「これ全部一帯牡蠣殻ですね。約年間200トンくらい出てますね」
山積みにされていたのは、カキの殻です。収穫されたカキは、身を取り出すと殻は廃棄物扱いになり、処理費用が掛かります。舞阪町養かき組合では、これまで殻を粉砕して農業用肥料やニワトリのエサなどにしてきましたが、さらなる活用方法がないかと模索していました。
<八木田牡蠣商店 八木田昇一代表>
「牡蠣殻自体にミネラルが含まれていますので、今回こちらを粉砕したものをビールの原料にしています」
ビールを実際に作ったのは、同じ浜松市内で醸造所とバーを兼ねる「オクタゴンブリューイング」です。

<オクタゴンブリューイング 千葉恭広さん>
「このタンクの中で水と一緒に20分から30分煮込んで、牡蠣殻の成分を煮出してその水でビールをつくりました」
できあがったビールは、通常のものに比べてカリウムやカルシウムなどのミネラル分が5倍から10倍ほど含まれています。その一方でカキ特有の味や生臭さはなく、これまで数百種類のビールをつくってきた千葉さんも仕上がりに満足してると胸を張ります。

<オクタゴンブリューイング 千葉恭広さん>
「比較的ライトなビールなんですけど、成分によってビールに奥深い味わい、香り、風味などをだしています」
少量生産のため、1本900円の価格をどうするかが今後の課題ですが、開発メンバーは全国に発信したいと意気込みます。

<開発した「ファンバンク」大城七瀬さん>
「ビールだけでなく、ビールの後ろにあるストーリーや生産者の思いと共にこれを広めていけたらなと思っています」
地域の悩みを「強み」に変えようという新たな試み。ライバルの多いクラフトビールで成果を出すには、その「強み」をいかに伝えられるかがカギとなりそうです。

