ウズラの卵が窮地に陥っています。2024年2月に起きた給食の死亡事故を受けて需要が減少し、農家は廃業の危機に直面。このピンチを乗り越えようと、静岡県湖西市の農家が、資金提供を呼び掛けるクラウドファンディングの実施を決めました。
湖西市の和食店「はづき」。こちらの看板メニュー「生シラス丼」を引き立てる名脇役がウズラの卵です。
<はづき 清水政士さん>
「人気ですね。ウズラの串フライもアツアツでほおばってくれる。主役じゃないけど、必ず必要な存在」
このウズラの卵がいま、かつてないピンチに追い込まれています。湖西市のウズラ農家「浜名湖ファーム」は飼育数は8万5000羽、1日当たり6万個の卵を生産しています。40年以上の歴史を誇りますが、2024年は創業以来の危機だと話します。
<浜名湖ファーム 近藤尚専務>
「春にウズラの卵の誤飲事故がありまして、その影響で学校給食の需要が減っていて、ウズラ農家も卵の出荷を制限されているという厳しい状況」
2024年2月、福岡県の小学校で、給食のおでんで提供されたウズラの卵を、小学1年の男子児童がのどに詰まらせて死亡する事故が起きました。この痛ましい事故を受けて、静岡市など全国各地の自治体で給食からウズラの卵が消えたため、出荷数は大幅に減少。浜名湖ファームは、メーカーから生産を減らすよう要請を受けて、1万羽のウズラを処分。このままでは、もう1万羽の処分を迫られることになるといいます。
<浜名湖ファーム 近藤尚専務>
「(えさは)全部輸入品で賄っていまして、物流コストも上がっていまして、えさ代も厳しいところがある」
追い打ちをかけているのが、円安やエネルギー価格の高騰。生産コストは10年前の約2倍です。こうした苦境を乗り切ろうと、浜名湖ファームは、インターネットを介して資金を集めるクラウドファンディングの実施を決めました。集まった資金で飲食店や企業に卵を提供し、多くの人に食べてもらうことで需要を掘り起こそうという取り組みです。
<浜名湖ファーム 近藤尚専務>
「この小さなウズラから生まれた卵を、これからも全国の皆さんに食べてほしいと思います」
かつてない逆風にさらされているウズラ業界。食文化を守る意味でも、まさに正念場を迎えています。