「下敷きになったら津波に飲まれる」建物の倒壊が避難の妨げに…能登から学ぶ耐震の重要性【備え続けよー地震災害の教訓②】
防災シリーズ「備え続けよ!」。地震災害の教訓から静岡の備えを見直します。今回は「津波と耐震化」。能登半島地震では、激しい揺れで倒壊した建物が津波避難の妨げになりました。
<井手春希アナウンサー>
「珠洲市上空です。海岸に近い家ほどなくなっています」
石川県珠洲市宝立町。地震の揺れで多くの家屋が倒壊しただけでなく、追い打ちをかけるように津波が襲いました。海岸から平らな土地が広がりますが、津波避難タワーはありません。
この場所の地震発生時の様子をとらえた映像があります。突然襲う大きな揺れ、車内からは悲鳴が聞こえます。車のドライブレコーダーがとらえた映像をみると、画面の奥の方で建物が倒壊、激しい揺れで、外に出ていた人は倒れ、手前の住宅も土煙を立てながら倒壊しました。車に乗っていた人は、避難して無事でしたが、約30分後、町に津波が押し寄せました。
<静岡大学防災総合センター 岩田孝仁特任教授>
「ここ来てるんだね、ここまでね、この橋のところまで」
静岡大学防災総合センターの岩田孝仁特任教授と現場を歩くと、津波で運ばれてきた海藻がいたるところに引っかかっていました。珠洲市全体では、9,400棟以上の住宅が被害を受けました。
<静岡大学防災総合センター 岩田孝仁特任教授>
「震源に近いところってやっぱり激しく揺れるでしょ。そのあと、津波が来るので結構厳しい。もし耐震性がなくて、下敷きになったら、そのまま津波に飲まれるでしょ。だから耐震性の確保ってすごく重要ですよね」
耐震性あっての津波からの避難。震源に近い珠洲市では、地震発生から1分で海面が変動し、わずかな時間で津波が到達したとされています。
<静岡大学防災総合センター 岩田孝仁特任教授>
「ああ、ここね。1mちょっと、1m20くらい、50くらい」
港のすぐ近くで船の整備工場を営む寺山広悦さん(72)。発災当時、防災無線で津波の情報を聞き、妻と2人で近くの学校を目指して避難を始めました。
<寺山広悦さん>
「家の下敷きになっている人がいた。助けてくれと。着の身着のまま救助の手伝いしながら(逃げた)」
Q.避難しながら、下敷きになった方の救助…
「ここにいるのに頼まれたら、こっちも嫌と言うことはできない」
救助する間に、津波は押し寄せていました。
<寺山広悦さん>
「一生懸命救助するでしょ。ベシャっと2階が1階を押しつぶしていた。何とか潜って、床板を剥がしたりしているときに、じわーっと水が上がってきた」
津波が迫る中、地域の人たちと一緒に10人ほどを助け出したといいますが、当然、自分の身を危険にさらしていたことになります。
<静岡大学防災総合センター 岩田孝仁特任教授>
「結果として津波が少しでも大きければ、一緒になって犠牲になってしまう可能性もある。どちらが正しいのか、わからないですよね。非常に判断を迷うとか、難しさがこういう災害の時に起きる」
判断を迷う状況になる前に、逃げることに専念できるよう、建物の耐震化は欠かせません。
<静岡大学防災総合センター 岩田孝仁特任教授>
「瞬間的に行動できないと本当に命にかかわってくる。特に津波の場合。どう行動するか真剣に考えたときに、1つずつ障害になるものをきちんと安全にしていくことが求められる」
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