静岡のホビー文化発信 「駿河屋」の魅力
静岡は言わずと知れた「ホビーのまち」。ゲームや玩具などを販売する「駿河屋」を運営するエーツー(静岡市駿河区)は、ホビー文化を積極的に発信しています。ネット通販と実店舗を合わせ、市場動向を分析した上で商品価値を判断することができる専門人材を採用するなど、国内外のファンを呼び込み、交流人口の増加を狙っています。その取り組みをまとめました。
静岡・旧マルイ跡に「新本店」 国内最大級の旗艦店
ホビー商材販売の駿河屋を運営するエーツー(静岡市駿河区)は6日、同市葵区の旧静岡マルイ跡に整備していた駿河屋新本店をオープンした。国内約120店舗を展開する駿河屋の旗艦店で、商品約1千万点をそろえ、体験スペースを複数備えるなど、国内ホビー商材販売店として最大規模。訪日客の回復や社会経済活動の正常化を好機と捉え、国内外のホビーファンを市中心市街地に呼び込み、交流人口増加を図る。
![フィギュアなどさまざまな商品が並ぶ店内=6日午前9時すぎ、静岡市葵区伝馬町](/news/images/n134/1333490/IP231006TAN900008000_0001_CDSP.jpg)
同社が駿河屋ビルと名称を改めた建物は地上9階建て、延べ床面積約1万6千平方メートル。同日は第1次開店と位置づけ、フィギュアやプラモデル、ゲームなどが並ぶ1~3階と、新本店の一部として存続させた旧静岡本店(同区)1階の営業を始めた。
目玉は駿河屋ビル2階に設けた複数の体験型スペース。線路のほか、建物や野山など周囲の風景にもこだわったジオラマでは、来店客が自前の鉄道模型を走らせることができる。同市清水区から訪れた男性会社員(21)は「模型を通じて知り合った新しい仲間と情報交換し、車両編成の参考にしたい」と話す。
モデルガンの射撃やラジコンの走行を試せるスペースでも、多くの人が目当ての品を手に取り、楽しみながら動作を確認していた。
駿河屋ビルの4階では、高額なトレーディングカード(トレカ)を扱う予定で、年内の全面オープンを目指す。新本店と旧静岡本店を合わせて、年間約80万人の来店客数と30億円の売り上げを見込んでいる。
エーツーの杉山綱重社長は「最高の品をそろえれば、人は自然と集まる。本店の2拠点間で連動イベントを仕掛け、街中の回遊性を向上させ、おまちのにぎわい創出に貢献したい」と語った。
(経済部・駒木千尋)
〈2023.10.07 あなたの静岡新聞〉
海外初進出 台湾に実店舗開設へ 2023年度内
ホビー商材販売の「駿河屋」を運営するエーツー(静岡市駿河区)は12日までに、本年度内をめどに台湾に進出する方針を固めた。関係者への取材で分かった。同社として海外初の実店舗を開設するほか、現地に物流倉庫と台湾専用のEC(電子商取引)サイトを立ち上げ、収益拡大とホビー文化の発信を図る。杉山綱重社長は「日本のアニメやゲームの人気が高い台湾の消費者に、ホビー商材を素早く広く届けていく」と意気込む。
同社は全世界で利用できるECサイト「駿河屋ドットコム」を運営しているが、割高な配送料や海外への配送時間の長さが課題となっていた。現地専用のサイトと物流倉庫を設け、顧客の利便性を高める。同社によると、台湾では中古品の買い取り・販売の習慣がないといい、日本のサービス導入で新規需要の取り込みを狙う。
静岡市葵区の旧静岡マルイ跡に、8月下旬にオープン予定の新旗艦店も台湾の消費者にアピールし、訪日誘客を狙う。杉山社長は「日本の駿河屋と全く同じサービス・機能を提供する。海外展開の第一歩として現地の支持獲得に全力を尽くし、将来的には各国に駿河屋を展開したい」と話した。
(経済部・駒木千尋)
〈2023.06.13 あなたの静岡新聞〉
“目利き”の採用推進 専門人材「ジョブ型雇用」
ホビー商材販売の「駿河屋」を運営するエーツー(静岡市駿河区)は、専門的な知識や能力、経験を持つ人材を雇用する「ジョブ型雇用」を推進している。主力商品のトレーディングカード(トレカ)の価値判断ができる専門人材を採用した結果、約1年でトレカの売り上げが大幅に伸長した。適正な値付けができる人材を配置して収益性と顧客満足度を同時に高め、従業員の待遇改善につなげる好循環も生まれている。
![エーツーが顧客から買い取ったポケモンカード。ジョブ型雇用の導入で、売り上げを大幅に伸ばした=7月、静岡市駿河区](/news/images/n134/1333490/IP230803TAN000077000_0001_CDSP.jpg)
同社は2022年8月以降、市場動向を分析した上で商品価値を判断し、自社の売買価格を決める「商品部」にトレカショップでの勤務経験者ら4人をトレカスペシャリストとして採用した。
高額な品もあるトレカは、豊富な知識と高度な鑑定眼が必要とされる。専門人材の活用で適正価格を下回る値付けを防ぎ、事業の収益性が高まった。駿河屋直営全店での人気トレカ「ポケモンカード」の7月の売上高は約2億3千万円で、スペシャリスト採用前の前年同月(約6千万円)比約4倍に増えた。店の窓口で買い取り価格をいち早く提示することも可能で、顧客も納得感を持って取引できるという。
商品部以外でも、買い取った中古品を素早く正確に検品・査定する能力などを持つ専門社員の採用を進める。報酬を業績と連動しているため、成果次第で年収1千万円も可能という。
同社は今後、増益分を従業員の賃上げや待遇改善に充てる方針。杉山綱重社長は「ジョブ型雇用を進めることで、人手不足の中でも選ばれる企業を目指す。組織をより『プロ集団』にすることで収益性を高め、顧客ニーズに応えたい」と話す。
(経済部・駒木千尋)
〈2023.09.01 あなたの静岡新聞〉
東京に「秋葉原本館」 2018年オープン
ネット通販と実店舗でゲームや玩具などを販売するエーツー(静岡市駿河区、杉山綱重社長)は2018年秋、東京・秋葉原に新店舗「駿河屋秋葉原本館」をオープンする。すでに5店舗を展開する秋葉原に新たに旗艦店を出店し、家電やホビー関連の競合店がひしめくエリア内で「駿河屋」ブランドの認知度向上を目指す。
館内にはイベントスペースも確保。アイドルのコンサートやサイン会などを企画し、体験やサービスに対価を支払うのを優先する「コト消費」を掘り起こす。増加する東南アジアなど外国人観光客からの需要にも期待を掛けている。
本館には1カ月当たり4、5万人の来店を見込み、月商1億2千万円を目標に掲げている。杉山社長は「秋葉原には世界中の人に行きたいと思わせる力がある。観光地として今後ますます伸びていくだろう」と消費地としての将来性を評価し、「(本館の出店で)圧倒的な存在感を発揮し、駿河屋の知名度を高めたい」と語った。
〈2018.03.16 静岡新聞朝刊〉