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静岡市のふるさと納税戦略 共感呼ぶ取り組み期待【黒潮】

 静岡市がふるさと納税の寄付額増加に向け、返礼品の拡充に本腰を入れている。過熱する自治体間競争とは一線を画してきたが、財政が硬直化する中で自主財源の確保を目指す。地域資源をアピールする好機と捉え、市のファンを増やすために知恵を絞ってほしい。
 今年7月、民間事業者から初めて返礼品を公募した。条件をクリアした359品目を採用し、738品目へとほぼ倍増させた。缶詰やマグロ、お茶など市を代表する地場産品の種類を増やし、「安倍川もち」「とろろ汁」といった名産品も新たに加えた。現在は第2弾の公募を受け付けている。
 市が返礼品の導入を始めたのは2015年度。当初、過度な返礼品競争とは一定の距離を置いていたが、19年に総務省が返礼品の基準を「寄付額の30%以下の地場産品」と明確化したことなどを受け、積極姿勢に転じた。
 ふるさと納税は都市から地方へお金を流す仕組みをつくろうと始まり、納税者が多い政令指定都市は減収となるケースが大半だ。減収分の約75%は国に補ってもらえるが、それでも市税の流出が寄付額を大きく上回る“赤字”が続いてきた。
 20年度は新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要を背景に、全国の寄付総額が過去最多の6724億円に上り、静岡市も5億円超と最多を更新した。実質収支は約700万円のプラスになる見通しだが、市民の大口寄付がなければ黒字は確保できなかったという。
 市内には全国に誇れる地場産品が豊富にあり、返礼品を拡充する余地はまだある。コロナ禍で打撃を受ける企業や生産者の支援にもつながりそうだ。
 最近では地域課題の解決など特定の事業に対して資金を集めるクラウドファンディングや、災害を受けた被災地への寄付も増えている。地域を応援したいという制度本来の趣旨に沿った動きが広がっていることは歓迎すべきだ。こうした寄付者の共感を得るため、返礼品の拡充にとどまらない取り組みも進めてほしい。財源流出を食い止めるためには全庁的な連携が欠かせない。
 

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