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社説(6月25日)就活「売り手市場」 地方企業、採用に工夫を

 2024年春に卒業する大学生らの就職活動は、面接や筆記試験などの選考活動が政府主導のルール上「解禁」になった。23年卒以上に学生優位の「売り手市場」といわれる中、内定を出した学生へのフォローも含め地方企業の採用活動もヤマ場を迎えた。
 静岡県内企業は、内定を得ながら就活継続中という学生や、就活を意識し始めた大学3年生らへのアピールを工夫してほしい。近年の採用難の経験を企業広報や学生対応の改善につなげられれば、社会人のUターン転職など人材確保の新機軸にもなろう。
 新型コロナ下で就活もネット活用が進み、オンラインの会社説明会や面接が広く導入された。地方企業は応募増を喜んだが、採用につながった企業ばかりではない。逆に、地方の学生の目が採用意欲旺盛な首都圏の企業にも向いた。地方企業こそコロナによる就活の変容を直視する必要がある。一方、ネット導入によって対面機会の重要性が改めて共通認識となった。
 就職情報会社ディスコの調査によると、選考が「解禁」された6月1日時点で81・3%の学生が内定を得ていると回答。前年を4・4ポイント上回った。その約2割が就活継続中で、4割強が「本命の企業がまだ選考中」と答えた。
 静岡商工会議所が会員事業所に行った昨年の採用状況調査で、今春の新入社員を「計画通り採用できた」という社は3割にとどまった。半数以上の社が「十分な数の応募がなかった」「内定を出したが辞退があった」と回答。地方企業にとって6、7月が採用成否の分かれ目になるのは今年も同様とみられる。
 説明会やエントリーシート受け付けを再開した企業もある。県内企業も臨機応変に人材確保を図ってほしい。
 企業にとって内定辞退は打撃だ。だからといって、他の企業への就活を終えるよう強要する「オワハラ」は許されるものではない。なぜ辞退かを聞いて次に生かしたい。
 それ以上に、入社に至った人たちの声を聞くことは有意義だ。何が強みに映り、何が決め手になったか。新入社員の率直な感想は今後の採用活動に生かせるだけでなく、中堅やベテラン社員が自社を見直すきっかけにもなろう。
 採用活動が早期化したからといって、終了時期まで前倒しになるわけではない。ディスコの企業調査で、7月以降も採用活動を継続するという社は7割を超えた。新卒採用の成功には、日程を二段、三段構えにするなど、企業も社会や就活生の変化に柔軟に対応する必要がある。
 就活生の中には「内定率8割」に出遅れを感じている学生もいるだろう。大学の担当者は丁寧に支援してほしい。

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