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社説(1月28日)中小の倒産増懸念 悲観せず事業の再建を

 新型コロナウイルス関連融資の利子や元本の返済が本格化する今年は事業継続を断念する中小企業の急増が懸念される。静岡県内の2022年企業倒産件数は歴史的低水準で推移したものの、国内全体では3年ぶりに前年水準を上回った。中小の経営者は将来を悲観しすぎず、社会経済活動が正常化に向かう中で早急に本業を立て直し、借入金の返済に向き合ってほしい。
 信用調査会社の東京商工リサーチが集計した22年の全国企業倒産件数(負債額1千万円以上)は、前年比6・6%増の6428件だった。一方で同社静岡支店がまとめた22年県内企業の倒産件数は7・2%減の167件。平成以降で過去3番目の低さだが、今後は物価高や人手不足に伴う人件費上昇などが収益を圧迫する業況下で、国内の動きを追随するように増えていくとの見方が強い。
 休業や廃業、解散の動向にも目を向けたい。帝国データバンクが今月発表した調査結果で、22年に休廃業を行った企業(個人事業主を含む)は、全国が前年比2・3%減の5万3426件、県内が1・5%増の1524件となった。行政による資金繰り支援や金融機関の伴走型サポートなどが寄与し、コロナ禍の収束が見通しにくい中でも倒産や休廃業の発生が低く抑えられてきた。
 ただ全国の休廃業のうち「資産超過型」が1・4㌽上昇の63・4%に達した点に注目したい。資産が負債を上回るなど財務状況に問題がないのに、あえて事業継続を諦めた企業が過半を占める。休廃業を決めた経営者の年齢別割合のピークは、前年比3歳上昇の75歳と過去最高を更新した。
 コロナ禍による売り上げ減に物価高のダメージも加わり、事業再建の希望を見いだせなくなった経営者が、退職金支払いなどの余力を残したまま休廃業に踏み切っているように映る。
 こうした中、日銀が16日発表した22年12月の企業物価指数は、前年同月比10・2%上昇の119・5と1960年の統計開始以降で過去最高を更新した。原材料コストが上昇の一途をたどる一方、価格転嫁は規模が小さな企業ほど進んでいない。
 物価高は当面続きそうだ。経営者はこれまでも打開に向け、努力を重ねている。県内企業は約半数が後継者不在で、高齢社長が長年経営を担っているだけに、会社の歴史をつなぐための事業承継支援を加速したい。地域雇用・所得を守るには、休廃業する企業の余力が新たな挑戦に投じられるような支援策も重要となる。

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