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社説(10月13日)モンゴル国交50年 拉致解決の糸口を探れ

 今年は日本がモンゴルと国交を樹立してから50年。今やモンゴルは最も親日的な国と言える。北朝鮮とのパイプがあり、拉致被害問題の解決には一貫して協力する姿勢を示している。
 半世紀前に社会主義国だったモンゴルはソ連が崩壊した1990年代初め、民主化された。日本が最大の経済支援国となり、両国の関係は一気に深まった。モンゴルはその後も北朝鮮とつながりを保っている。
 北朝鮮が日本人の拉致を認めた小泉純一郎首相の訪朝は20年前。その後、目立った進展は見られない。手詰まり感は否めない。だが、拉致被害者の帰国を待ちわびる親世代は次々に他界している。政府は一刻も早く解決の糸口を探らなければならない。
 それだけに日朝の仲介役となり得るモンゴルとの連携は重要度を増している。国交から半世紀を機に関係をさらに強化したい。
 この20年間、解決に向けた動きが全くなかったわけではない。その都度、モンゴルが日朝交渉の場になっていた。2018年6月、トランプ米大統領と金正恩[キムジョンウン]朝鮮労働党委員長(現総書記)の米朝首脳会談で拉致問題が取り上げられたことを受け、日本政府はモンゴルで開催されていた国際会議に政府高官を派遣して北朝鮮当局者と非公式に接触し、日本の立場を伝えた。
 スウェーデンで14年5月に開かれた日朝政府間協議で北朝鮮が拉致被害者の再調査を約束した「ストックホルム合意」について確認するため、翌15年にモンゴルで日朝の極秘会談が行われている。14年、拉致被害者の横田めぐみさんの両親、滋さんと早紀江さんが北朝鮮で暮らすめぐみさんの娘と対面したのもモンゴルだった。ただ、日朝接触の貴重な機会となるモンゴルでの国際会議はコロナ感染拡大後は開催されていない。
 岸田文雄首相は拉致問題解決に執念を燃やした安倍晋三政権の外相時代、モンゴル外相との会談を重ねた。しかし、首相就任後、金総書記と条件を付けずに会談する意向を示すだけ。本気度が感じられないと言わざるを得ない。モンゴルのフレルスフ大統領は年内にも訪日する意向があるという。首脳会談が実現すれば、拉致問題の協力をあらためて強く求めるべきだ。
 静岡県は11年、モンゴルのドルノゴビ県と友好提携を結び、高校生の相互訪問を続けてきた。東京五輪・パラリンピックでモンゴルのホストタウンとなった焼津市は交流を継続していく。地方レベルの友好を深めることも両国相互の理解や援助につながる。

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