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帰ってきた路面電車「清水市内線65号」 最後の現存車両 富山から移送、本格修復へ

 静岡鉄道が旧清水市の中心市街地で運行した路面電車「清水市内線」の最後の現存車両「65号」が、8月上旬に富山県から静岡市内に移送された。保存に取り組む「清水鉄道遺産保存会」代表の青木渉さん(31)=同市清水区=が自費で市内の私有地に移し、本格修復を始めている。青木さんは「将来的には市民が静鉄の保存車両を見られるようにしたい」と意気込む。

静岡市内に移送された清水市内線65号=8月上旬
静岡市内に移送された清水市内線65号=8月上旬
市民の足として活躍した清水市内線65号=1973年撮影(清水鉄道遺産保存会提供)
市民の足として活躍した清水市内線65号=1973年撮影(清水鉄道遺産保存会提供)
静岡市内に移送された清水市内線65号=8月上旬
市民の足として活躍した清水市内線65号=1973年撮影(清水鉄道遺産保存会提供)

 8月上旬、遠路をトレーラーで運ばれた65号が保管場所に到着すると、専門業者がクレーンでつり上げてあらかじめ敷設されたレールの上に車両を下ろした。青木さんや鉄道好きの仲間ら約15人が周辺の交通整理に当たるなどしてその姿を見守った。65号の車体は潮風によるさびなどが見られ、修復が必要な状態という。
 清水市内線は1928年に開業し、旧清水市の港橋―横砂間を結んで市民の足として親しまれた。74年の七夕豪雨で被害に遭い、復旧がかなわず翌75年に廃線となった。65号は車体外側が金属製で近代的なデザインの一方、木製でレトロな内装が特徴。太平洋戦争や七夕豪雨の被害を免れた“強運”の持ち主で、廃線の際には駅で花飾りを付けて市民に別れを告げた。
 車両はその後、市内の博物館で屋外展示されていたが、老朽化で展示が困難となり、別の民間企業を経て青木さんが譲り受けた。保管場所の都合で2010年ごろに富山県へ移したが、青木さんは「いつかは静岡に戻したい」との思いを持ち、定期的なメンテナンスを続けてきた。
 青木さんは高校時代に保存会を立ち上げ、県内外の有志とともに65号以外にもさまざまな保存車両の維持に取り組む。青木さんは「実物を見たり乗ったりすることで、模型では分からないことに気づける」と保存の重要性を語る。今後は修復作業を進めつつ、一般公開の方法を探るという。
 

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