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社説(8月1日)デジタル弱者対策 寄り添う姿勢忘れずに

 政府は地域活性化を図る看板政策に「デジタル田園都市国家構想」を掲げる。高速インターネット通信ができる光ファイバー回線の普及やデジタルに詳しい人材の育成を進めるが、活用できる人が限られるようでは地域活性化も掛け声に終わる。スマートフォンやパソコンの扱いに不慣れな“デジタル弱者”の支援に力を注ぐ必要がある。
 「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル社会」の実現を唱える政府は、支援の担い手として国が任命するデジタル推進委員を本年度中に2万人以上確保する方針を示した。既にデジタル支援員を置いて高齢者対象のサポート事業に乗り出している自治体は多い。地域の実情に合った配置が求められる。何よりもデジタルが苦手な人に寄り添う姿勢を忘れてはならない。
 デジタル田園都市といっても、イメージが湧かない人も多いだろう。政府はデジタル化で、どのような新たな価値が得られるのかを具体的に示す必要がある。目指す社会の姿によって支援の中身も方法も変わってくる。
 内閣府が昨年9月のデジタル庁発足を前に実施した調査によると、60代で25%、70歳以上で57%がスマホを利用していない。スマホは持っていても電話しか使っていない高齢者が目立つ。新型コロナ禍以降、ワクチンのネット予約ができない、観光振興施策GoToトラベルが利用しづらいといった声も高齢者を中心に上がった。
 国は行政手続きのオンライン化を図るため、マイナンバーカードや電子納税サイトe―Taxなどの利用促進を目指す。ただ、効率化を強調するだけでは、利用は大きく増えないだろう。
 教えてほしい内容は個々に異なる。島田市では2年前から、市内に移住したITに詳しい元地域おこし協力隊員が支援員として公民館などで講習会を開いている。きめ細やかな指導ができるよう定員は10人以下。市の担当者が見込んだより利用は多いという。
 電話だけでなく、メールやLINE(ライン)、写真撮影、ネット検索などがスマホでできるようになれば、新たな楽しみが増える。相手とのやり取りなどを通じて孤立感、孤独感が解消される人もいるだろう。
 操作方法を忘れたり、トラブルが生じたりで途方に暮れた時、駆け付けてくれる人がいれば心強い。幼い頃からデジタル機器に親しんでいる若者が近くにいれば頼りになる。高齢者の中にも若者に劣らずデジタル機器を扱いこなす人はいる。同じ地域の中で支え合う仕組みを考えてもいい。新たな交流が生まれるかもしれない。

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