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相次ぐため池転落 脱出補助へ救命ネット設置の動き 島田市でも

 農業用のため池に誤って転落する死亡事故が全国で後を絶たない中、対策の一つとして池からの脱出を補助する安全ネットを設置する事例が出てきた。静岡県内でも島田市が地元企業と連携し、市内のため池に取り付けた。農林水産省によると、ため池に転落して死亡した人は、昨年度までの10年間で251人。事故は夏場に増加する傾向にあり、専門家は積極的な対策を呼びかけている。

ため池ののり面に設置された安全ネット=7月15日、島田市内
ため池ののり面に設置された安全ネット=7月15日、島田市内

 島田市は15日、市内の農業用ため池1カ所にナカダ産業が開発した安全ネットを設けた。幅4メートル、長さ5メートルのネットをコンクリートブロックののり面に固定し、救命具の浮輪も付けた。ため池は1300平方メートルで、水深は最大3メートル。傾斜のあるのり面は滑りやすく、落下すると大人でもはい上がるのが難しいという。企業の担当者は「のり面に遮水シートを使用している池は、さらに危険度が高い」と指摘する。
 市が管理するため池は10カ所。今回ネットを設置したため池を含め、その多くはフェンスで囲われて関係者しか立ち入りできないが「簡単に乗り越えられてしまい、中には住民が憩いの場のように使っている場所もある」(市農林整備課の担当者)。ことしに入って宮城、青森の両県で子どもの死亡事故が相次いだことを受けて試験的に設置した。今後は拡大も検討する。
 4月に小学生の死亡事故があった宮城県栗原市は、現場のため池を含め14カ所に安全ネットを整備することを決めた。農水省によると、同県など東北地域で設置事例が徐々に増えているという。
 ため池事故の現地調査などを行う水難学会の斎藤秀俊会長(長岡技術科学大大学院教授)は「立ち入り制限と救命策の両方がなければ、事故は繰り返されてしまう」と指摘した上で、「農家自身の命を守るという観点からも、一歩踏み込んだ安全対策が必要」と話している。
 
 ■県内631カ所 2割で対策未実施
 農水省によると、農業用ため池は全国に15万カ所以上あり、多くは西日本に分布している。県内は他の都道府県に比べて少ない631カ所。県農地保全課の6月までの調べでは、全体の約2割にあたる135カ所で安全柵や看板などの転落防止策がなかった。このうち、人が立ち入る可能性がある43カ所について、市町に安全施設の設置を促している。
 全国でのため池の転落死亡事故は毎年20件前後発生している。10年間で死亡した251人の事故原因は、釣りや遊びなどの「娯楽中」が22%、車両事故が20%と続く。5~9月にかけて事故が多くなる傾向という。
 農水省はことし発生した子どもの死亡事故を受け新たにパンフレットを作成し、国の助成制度を活用した安全対策の実施を呼びかけている。

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