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独特のキャラクターで癒やし振りまく 浜松市出身の落語家 柳家花いちさん【NEXT特捜隊 あの人に聞きたい】

 落語界のサラブレッドとも称される柳家花緑さんに弟子入りして約15年、昨年9月に真打ちに昇進した柳家花いちさん(39)=浜松市中区出身=。同区の40代女性から「真打ちになって変わったことなど、いろいろ聞いてみたい」と依頼が寄せられた。取材を申し込むと「はい、うれしいです」と即快諾。柔らかな物腰で周囲をふわりと明るくする独特のキャラクターに癒やされた時間だった。

柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん
柳家花いちさん


真打ち「変わらず」「不安だらけ」


 真打ち昇進は落語協会理事会で決まり、師匠を通じて聞くわけですが、基本は年功序列の世界です。そろそろだなと楽しみに待っているのが一般的だと思います。私はと言うと正直「やった!」というよりも不安だらけでした。真打ちになればトリをとることになりますし、集客にも責任が伴う。そういう思いの方が強かったです。弱々しいことを言ってますが…(笑)。
 真打ちに上がると寄席で前座さんが着付けに付いてくれたりしますが、私は今までと変わらずです。若手を応援する落語会から声が掛からなくなったのは当然と言えば当然なんですが、少し寂しくも感じています。ぜひ静岡県内からたくさんお声掛けいただけたらうれしいです。


師匠との出会い 忘れないあの日


 しぐさが上品で美しい。師匠の花緑は文字通り高座の「花」。楽屋でも明るく、いつも前向きなんです。挑戦を止めません。憧れますし、もっと見習いたい部分です。
 師匠との最初の出会いは岐阜で過ごした学生時代。鵜飼い舟の落語の席で師匠の話芸に触れました。一度は漫才の世界を目指しましたが、コンビを解消した際、ぱっと師匠の顔が浮かびました。弟子入りを直接願い出る勇気がなく手紙を送ったところ、電話番号を書いたお返事をいただいて。渋谷の喫茶店で2時間ほど話した後でした。「きょうから弟子だよ」と。手紙は今も取ってあります。
 ちょっと現実以上にドラマチックに仕立てちゃったかもしれません(笑)。でも、本当の話です。


ホットで粘る 新作発想は喫茶店


 古典もやりますが今は寄席では新作を中心にしています。古典は江戸からある台本をたくさんの師匠方、先輩方が磨いてきたものですから当然ながら安定の面白さです。でも上手な人が山ほどいますからね、比べられると負けちゃいます。また情けないことを言ってますね、すみません。
 新作を考えるのは喫茶店。2時間でも3時間でもぼーっとしてひたすら考えます。飲み物は決まってホットコーヒー。中身が減っても遠目には分からないから(笑)。粘っても出ないときは、はしごします。生活の中で見聞きしたこと、自分が犯したミスなどに種があり、話を膨らませていきます。ちょっとした種や思い付きを記したノートをいつも持ち歩いています。


落語×芸人 未来を共創


 芸人さんがほんとに好きなんです。特に面白いけれど、まだテレビには出ていないような若手。めちゃ熱量があって刺激を受けるし頑張らなきゃって思えます。彼らと一緒につくる公演も今年から本格的に始めました。お笑いライブは20、30代が中心、落語会は50、60代が中心。それぞれのファンが集って両方を楽しんでもらえる機会にしたいと考えています。落語の新しいファン層を得ることにもなりますし、何より面白い若手芸人を支援することにもなると思うんですよね。
 私は売れない漫才師をしていましたから若手の生活の厳しさがよく分かります。面白い人が食べていけない世の中は嫌じゃないですか。お前はお前の心配をしろって突っ込まれそうですが…ほんと、すみません(笑)。


 やなぎや・はないち 1982年9月24日生まれ。本名・松本康延。浜松開誠館高、岐阜聖徳学園大を経て漫才の世界に。約2年でコンビ解消。2006年、4番弟子として柳家花緑さんに入門。07年に前座、10年に二ツ目に昇進。幼少時代から大のお笑い好き。現在も暇さえあれば芸人の動画を見たり、ライブに足を運んだり。横浜市在住。

 ※身近にいる変わった特技を持った人、ユニークな活動を展開している人、近所で知る人ぞ知る有名人…。多くの人に知ってほしい「あの人」をあなたに代わって訪ねます。情報と、聞いてみたい質問をお寄せください。
 n-toku@shizuokaonline.com

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