「うちの和牛はホルスタインから生まれてきた」酪農家が挑む『和牛受精卵ビジネス』牛乳以外の収入源確保へ

乳牛を活用して高級食材の和牛を生み出す。そんな取り組みに浜松市の酪農家が挑んでいます。背景にあるのは牛乳の問題。窮地に立たされている国内の酪農家を救う役割が期待されています。

おいしそうな音を立てて網の上で焼かれているのは「イチボ」と呼ばれる和牛の希少部位です。

浜松市中央区の焼肉店「うしいろ」は国内産の和牛を中心に厳選したメニューを提供しています。味だけでなく見た目も美しい。そうした魅力が和牛のブランド力を育んでいます。

<浜松焼肉うしいろ和田匡平店長>
「油がしつこくなくて、その分うまみが強いですね。和牛というブランド力が強いので有名な産地でなくても全体的にしっかりしていますね」

この和牛をめぐる新たなビジネスを、浜松市の酪農家が本格的にスタートさせました。

<オーバーザレインボー岩崎健太郎さん>
「うちの和牛は和牛から産ませたものではなくて、受精卵というものを取りまして、ホルスタインから生まれてきた和牛です」

こちらの牧場が進めているのが、和牛の受精卵を使って乳牛に和牛を生ませるという取り組みです。まずは和牛同士を交配させて、獣医師が受精から1週間後くらいの卵子を洗い流す方法で胎内から取り出します。

<森のどうぶつ病院大場孝倫院長>
「入った液体が引き戻すと戻ってくるので、この中に子宮の中にある受精卵が戻ってくる」

回収した液体を動物病院に持ち帰り、顕微鏡で確認しながら受精卵を回収します。回収した受精卵は凍結保存します。この卵子は和牛だけでなく乳牛に受胎させることでも和牛を生むことができるのです。

こうして回収した受精卵を他の酪農家などに販売する許可を、オーバーザレインボーは2024年に取得しました。

オーバーザレインボーは、もともと乳牛の育成と牛乳の販売がメインの牧場です。そんな酪農家が和牛受精卵ビジネスに乗り出した背景には切実な問題があります。

<オーバーザレインボー岩崎健太郎さん>
「近年2、3年で餌代がググっと上がってしまって。でも牛乳の乳価は上がっても10円とかなんですよね」

近年の物価高に円安が追い打ちをかけ、こちらの牧場では牛1頭の1日当たりの餌代がこの4年間で1000円ほどアップしました。一方、牛乳の卸値は1リットル当たり10円上がったくらい。

1頭の牛から採れる牛乳は1日30リットルほどで、現状ではほとんど利益が出ないと話します。このため、こちらの牧場では受精卵を他の酪農家に販売することにしました。受精卵を使って和牛を生産してもらうことで、酪農家に牛乳以外の収入源を生み出すことが狙いです。

<オーバーザレインボー岩崎健太郎さん>
「自分たちが他の酪農家さんのちょっとでも手助けになれればいいと思う」

牛の受精卵は、窮地に陥った酪農家にとって新たな選択肢となる可能性を秘めています。

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