静岡市が誇る世界有数の模型メーカー「タミヤ」に2024年、強力な助っ人が加わりました。模型の歴史研究を担う「顧問」に就任したのは、アナウンサーという経歴を持つ「タミヤマニア」です。
子どもたちの視線を釘付けにするのはミニ四駆。11月16、17の両日に静岡市駿河区のツインメッセ静岡で開かれた「タミヤフェア」。世界中の「タミヤファン」が訪れました。
「後ろから青いボディがやってきた!さぁどうだ!ゴールはどうだ!宇宙人にぶつかった!こっちはひっくり返った~」
子どもたちが長い列を作っていたのが「動く模型愛好会」によるタンクジオラマレース体験コーナー。レースを彩る華麗な実況を担当したのは、元テレビ朝日アナウンサーの松井康真さん(61)。このレースを主催する愛好会の執行役員でもあります。
「こういったコースは一般の家庭にはないので、コースを作って、実況があることで、システムを組むことで、子どもたちが喜んでくれる。ぜひ、静岡の子供たちには、大きくなった時にこうやって遊んだことを思い出して、それを何かのものづくりにしていてもらえれば」(松井康真さん)
小学生のころ、プラモデルに出会った松井さんは、タミヤ模型の収集や制作、研究がライフワークに。自宅には、3,000以上のプラモデルをコレクションしていて、そのコレクター魂は並大抵のものではありません。
<松井康真さん>
「創業から1975年までのタミヤの模型広告はおそらく98%原本で持っている」
<青木隆太アナウンサー>
Qなんで持っているんですか?
<松井さん>
「コレクターだからです」
松井さんはアナウンサーや記者として、「ニュースステーション」やスポーツ実況を担当。一方、自ら作った模型を使ってニュースの解説をすることも。さらに、タミヤ公式ガイドブックの解説を執筆するなど、そのマニアぶりをどんどん深めていきました。
定年も近付いてきた55歳。セカンドキャリアを考え出す頃にこんな話が舞い込んできました。
「真に受けていいんですか?」
「今から6~7年前くらい前、(田宮俊作)会長からこう聞かれた。
『松井さんいまいくつ?』
『53です』
『じゃあ、あと7年だ。テレビ朝日辞めたら、うちを手伝ってくんない?』
と言われまして『真に受けていいんですか?』と。役に立てるならお願いしたい、そういう話をしている頃に、新社長の田宮信央さんからも『お願いします』という話になった」(松井さん)
2024年3月、タミヤの模型史研究顧問に就任。松井さんのライフワークがそのまま、仕事になりました。
その歴史が集約されているのが、タミヤ本社(静岡市駿河区)内にある「タミヤ歴史館」。約1,300点の展示品が並びます。
「『ハンティングタイガー』。新しいものと古いのものでは、箱の大きさが違う。後ろに兵士が3人写っているが、アメリカの消費者団体から『箱に写っているものが中に入っていない』というクレームが他のメーカーに来て、それをタミヤがいち早く察知して、『これはまずい』と絵の切り替わりがあった」(松井さん)
松井さんの使命は、この歴史館のリニューアル。足を止めずにはいられない往年の模型が並ぶ一方で課題もあります。タミヤを愛するからこそ、より歴史を正確に表したいと日夜、構想をめぐらせます。
「キャプションといって、それぞれ、何年発売、とは書いてあるが、シリーズの流れなどの説明がほぼない。初めて来た人は、『なんだか、古いものが並んでいるね』で終わってしまっている。そういうことをシステマチックにしっかり見せたい」(松井さん)
ニュースの現場を離れて始めたセカンドキャリア。松井さんはこれからも、果てしない夢を追い続けます。
「構想はないが言い続ける。巨大なタミヤランド。そのためには、まず、ある区域のなかの歴史館をリニューアルというか、『松井さんが来たらガラっと変わったね、これはおもしろいわ』と社員の方に思ってもらえたら、機運が高まってくるかもしれない。『タミヤいいね!』ってなれば」(松井さん)