川勝知事が認めない“リニア工事”重要な局面にJR東海が示した提案 水と生態系…解決に進むのか? 次の焦点は“土の行き先”【現場から、】

静岡県内での工事の見通しが立たず、2027年の開業が難しいとされるリニア中央新幹線について、県が長年、工事を認めない背景には、大きく分けて2つの問題があります。

▼大井川の水が減る問題
▼南アルプスの生態系の問題

今、この2つの問題は重要な局面を迎えています。

静岡市内から、車で約4時間かかる山奥にリニア中央新幹線の静岡工区があります。リニア新幹線の品川から名古屋まで全長286kmの区間のうち、静岡工区は8.9kmです。

静岡県が工事を認めない背景にあるのが「大井川の水」の問題です。トンネル工事によって大井川を流れる水は最大で毎秒2トン減るとされていて、県はこれまで「全量戻し」を求めてきました。

<坪内明美記者>
「大井川上流部の田代ダムです。工事で流れ出る水を大井川に戻す方法として、このダムを活用した案が有力視されています」

JR東海が提案したのは、山梨県側に水を流す田代ダムの取水を抑え、静岡県側の水量を確保する案です。具体的には、田代ダムの取水口にゲートを設けることで、山梨県側に流れる水を抑え、大井川の水を増やす仕組みです。

この案について10月、JR東海はダムを管理する東京電力との協議がまとまり、流域の市や町からも賛同が得られたとしています。

<JR東海 丹羽俊介社長>
「流域関係者の皆様にご安心いただくために田代ダム案を速やかにまとめたい」

一方、南アルプスの生態系の問題でも大きな動きがありました。

<JR東海 宇野護副社長>
「有識者会議としての報告書案がまとまるということですので、大変喜ばしいと思います」

11月7日、南アルプスの環境への影響について話し合う国の有識者会議は「JR東海の進め方は適切であると判断できる」として、報告書をまとめることで合意。2022年から14回に及ぶ議論が事実上、終結しました。

水問題は、田代ダム案によって解決の道筋がみえましたが、静岡県の川勝平太知事は「田代ダム案は採掘中に出る水を戻すのではないので全量戻しとは違う」と持論を展開しています。

また、生態系の問題では、国の有識者会議で「JR東海の進め方は適切であると判断できる」とされましたが、川勝知事は「課題が残されたと認識していて、非常に残念に思う」と発言しています。

2つの問題が解決に向かう中、次に焦点となるのは、工事で出る土砂などの置き場についての議論です。

<坪内明美記者>
「工事で発生する土の置き場の候補地になっているツバクロです」

JR東海は、ツバクロと呼ばれる約14haの広大な土地に、工事で発生する東京ドーム3杯分に相当する土を置く計画です。しかし、2022年、現地を視察した川勝知事は、この計画に反対の姿勢を示しています。

<静岡県 川勝平太知事>
「私はここは不適ではないかと思います。大規模地震があった時に深層崩壊が起こってきた歴史があるので、それを前提にしたシミュレーションでないとダメだと」

県が土石流の懸念を示していることに対し、JR東海はシミュレーションの結果を基に「発生土置き場があっても土石流の影響は小さい」としています。

発生土置き場の議論はまとまっていくのか?リスクに対する考え方が県とJR東海で異なっていて、完全に一致するのは難しく、折衷案を見出せるかが重要です。

発生土の置き場については、県の専門部会などで議論が続く見通しです。

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