元清水エスパルスの岩下敬輔さん 実は高校卒業後の進路は横浜F・マリノスの予定だった!? 入団先が変わった意外な理由とは?
鹿実監督の一言で進路決定? 「練習場貸してほしいからエスパルスに入って」
鬼頭:今夜は元清水エスパルスの選手で、先月静岡市内に飲食店「博多もつ鍋いっぱち」をオープンされた岩下敬輔さんにお越しいただきました。ヒデ:プロフィールでどうしても私も関わりたいとこがあるので紹介をお願いします。
鬼頭:岩下さんは鹿児島県出身の36歳。鹿児島実業高校(鹿実)サッカー部では1年生の頃から活躍され、全国高校サッカー選手権大会には3年連続で出場。3年生ではキャプテンを務め、選手権の決勝では、ヒデさんの母校・市立船橋高をPK戦の末に破って見事優勝しました。高校を卒業してすぐに清水エスパルスに入団。ガンバ大阪、アビスパ福岡、サガン鳥栖を渡り歩いて2020年に現役を引退されました。
ヒデ:私の高校の先輩でキャプテンをやっていた安達亮さんが鹿実にコーチで行かれていたんです。選手権の決勝で市立船橋の恩師・布啓一郎監督(当時)との対決になり、僕らの中では亮さんが布さんを超えたという話題になったんですよ。
選手権で優勝もしてますし、プロからオファーがたくさんあったと思いますが、エスパルスを選んだ理由はなんだったんですか。
岩下:本当は95%横浜F・マリノスに決まってたんですけど、当時のサッカー部の松澤隆司監督が「お前は清水で決まってるから」って急に言い出して。
ヒデ:それは岩下さんがエスパルスに合っていると思われたということじゃないんですか。
岩下:鹿実の卒業生がいないチームはもう名古屋グランパスと清水エスパルスぐらいだと。チームの練習場を貸してもらえるようにしてほしいからお前はエスパルスに入ってくれという話でした(笑)。
ヒデ:もう戦国武将の娘みたいなことですね。江戸に嫁げみたいな感じだったんだ。
岩下:マリノスのスカウトや強化部はひっくり返ってました。
ヒデ:まあ、冗談でもあるんだと思いますけど、そういうルートを作ったということですね。それで清水と繋がって、ご活躍されたということですから。
鬼頭:鹿実の中で1年生から活躍するということはすごいことですよね。
岩下:1年生のときに僕がPKを外して選手権の1回戦で負けちゃったんですよ。それで先輩の高校サッカーを終わらせてしまったんで。
エスパルス時代に仲良かったのは小野伸二 プレーは天才すぎて分からない(笑)
ヒデ:PK戦は言い方が悪いですけど、誰かが外さなければ終わらないですから。先輩に申し訳ないという気持ちはご本人にはあるでしょうけど。そんなこともあってプロの世界に入りましたが、オリジナル10の清水エスパルスに来てどうでしたか。
岩下:澤登正朗さん、森岡隆三さんとか日本代表の選手の方が多かったんで、やっぱりオーラが違いすぎてもう怖かったですね(笑)。
鬼頭:2005年にエスパルスに入ってから2012年までいらっしゃった間はどの辺の選手と仲良かったんですか。
岩下:小野伸二さんと仲良くさせてもらっていましたね。
ヒデ:学ぶものがたくさんありましたか。
岩下:いやもう、あの人はもうプレーは天才すぎて分からないです(笑)。僕らがパスをするとき、相手が詰めて来たら右足側や左足側に少しずらして出したりするんですが、小野さんは「ずらさないでくれ」って言うんです。「俺は真ん中でいい」って。
ヒデ:僕は日本一上手な人は小野伸二だと答えていいと常に言っているんですよ。そのレベルだとどこでもいいと。
岩下:逆に言うと自分の感覚でやるからお前のメッセージはあんまりパスに込めなくて大丈夫よっていう。こっちは良かれと思ってやるんですけど、全然それは要らないよと。
ヒデ:エスパルスを退団後、ガンバに移籍して2014年にはJリーグ、Jリーグカップ、天皇杯の国内3冠ですよ。これはすごいことですよね。この原動力だったわけですよね。
岩下:ガンバがJ2に落ちそうなときにオファーをもらいました。結局降格しちゃったんですよ。残留させるために行ったのに、落としちゃったっていうのがあったんで、チームに残りました。そのタイミングで長谷川健太さんがまた監督になりました。
ヒデ:健太さんがエスパルス時代からずっと見てくれてるっていう。
岩下:健太さんとは現役だった16年のうちの10年を一緒にやらしてもらいました。ガンバに行くまで1個もタイトルを取らせてあげられてなくて。でも僕は結構使ってもらってる方だったんで、やっぱり恩返ししたいなっていうのがずっとありました。
鬼頭:長谷川監督って時を経て何か性格とか雰囲気が変わったなってリポーターとして近くで見てて思うんですけど。
岩下:エスパルスからガンバに来た段階でもう全然変わってました。選手に対するアプローチとか。モチベーションを上げるのはすごく上手です。1回突き放したり、「お前頼むぞ」と個別でミーティングしたりしてモチベーション上げるのは本当にどの監督さんよりも上手な方ですね。
ガンバで国内3冠 ベンチ外の選手にも勝利ボーナスが!
ヒデ:3冠というのはとんでもない偉業ですよ。どんな景色なんですか。岩下:ガンバはタイトルに対する貪欲なアプローチがすごい。会社と一体になって、優勝するためだったら選手のためにめちゃくちゃ会社の人たちが気を遣う。駐車場も近いところに選手のみんなを停めさせたりというところまで気を遣ってくれました。
ヒデ:結局戦っているのは11人だけじゃないということなんですね。
岩下:あとベンチ外の選手にもボーナスを出すっていうシステムなので、ベンチ外の選手たちもモチベーションが高い。頼むから勝ってくれって。
ヒデ:引退を決意されたきっかけはなんだったんですか。
岩下:怪我ですね。右足だけで5回手術していて、軟骨がもうゼロなんで。1日練習しただけで水はたまるし、血もたまる状態でした。その辺の公園に行って帰ってくるときにも足を引きずって歩いているぐらいなので。
ヒデ:もう、十分だろうと。
岩下:そうですね。最後に地元の鹿児島ユナイテッドFCから3年間のオファーをもらいました。選手として稼働できないと話をしても、「それでもいいから若手に刺激与えてくれ」って言ってもらったんですけど、やっぱり選手なんでプレーしないと意味ないなと思ったから断りました。
鬼頭:岩下さんって男らしいイメージが高校時代からあって、プレーを見せられなくなったらもう退くっていう決断はいさぎいいなと思いましたね。
ヒデ:そんな岩下さんにリスナーから「休みの日は何をしてますか。ルーティンを教えてください」という質問が来ました。
岩下:休みの日はとにかく肝臓を休めてます。
ヒデ:私もお酒すきですけど、ちゃんと休肝日取れてますか?
岩下:取りたいんですけどなかなか取らしてもらえないですね。今は毎日お店に立たせてもらってますし。
ヒデ:もう1人メッセージをいただきました。「高校3年のときに選手権を見てファンになりました。静岡でお店開いてくれて嬉しいです」とのことです。ピッチを店舗フロアに変えて、サポーターをお客さんに変えていかがですか。
岩下:エスパルスのファンの方って分かりやすいんです。勝ったときはユニフォームで店に来ますし、負けたらエスパルスのサポーター感を出さずに来るんです。
静岡市内でもつ鍋店開店 きっかけはエスパルス退団時の心残り
鬼頭:鹿児島出身で、清水やエスパルスからも離れていたのになんで静岡でお料理屋さんを開いたんですか。岩下:僕がエスパルスを出ていったのが夏だったんです。そのとき、監督に練習中に「お前帰れっ」て言われて帰っちゃったんですよ。次の日謝り行ったんですけど、また「帰れ」って言われてそのまま帰っちゃいました。そしたら「もう使わない。どこか他のチームを探してくれ」って言われて。
ガンバから「すぐ明日来てくれるか」って言われたので、もう「明日行きます」って言いました。クラブハウスでも挨拶をしてないですし、静岡のサポーターの方々にメッセージも残せてなかった。そういう意味でも静岡にお店を出したいなってのはずっとありました。
ヒデ:恩返しも兼ねてということですね。ところで、エスパルスですが今はJ2ですよ。どうですか。
岩下:このメンバーがいるのでもうちょっと上にいてほしいなっていうのはありますね。お店に来たときに毎回言うんで、それが嫌で来ない選手もいるとは思いますけど。ただそういうサッカーの話とかも普通にしてきてくれたりするのはありがたいなと思います。
ヒデ:岩下さんの夢とか今後の目標を聞きたいですね。
岩下:店舗はもうちょっと増やしていきたいなと思っています。引退するまで長い選手もいれば短い選手もいます。そういう受け皿じゃないですけど、各地にお店を作れたらなとは思っています。
ヒデ:セカンドキャリアをサポートしていくということですね。
鬼頭:お店を開くってすごい大変だったんじゃないかと思うんですけど、どなたか人生の先輩とかにアドバイスいただいたんですか。
岩下:いろいろ聞きましたし、店長をやってもらっている子が僕の一つ下で、エスパルスのユース出身だったんです。元々別の仕事をしてたんですけど、僕が「静岡に店を出したいから勝負してくれないか」っていう話をしたら、「ついていくんで一緒に頑張らせてください」って言ってくれました。
ヒデ:それでは最後に皆さんにメッセージを。
岩下:静岡にJ1のチームがいないっていうのはやっぱり寂しいなと思うので、ぜひ選手たちにいろんな声を届けてもらい、静岡サッカーを盛り上げてほしいなと思います。
サッカー大好き芸人、ペナルティ・ヒデと、サッカー中継のリポーターとしても活躍する鬼頭里枝の2人がお送りする番組。Jリーグから海外サッカー、ユース世代、障がい者サッカーなど幅広くスポットを当て、サッカーを通して静岡を盛り上げます。目指すは「サッカー王国静岡の復権」です!