まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」を減らそうと、静岡県内のスーパーが立ち上がりました。取り入れたのは「ガチャガチャ」。人間の心理をたくみについた、とっても楽しいエコ活動です。
<スーパー店員>
「(客からシール受け取って)ガチャガチャで」
親子連れが向かったのはスーパーの店内にあるガチャガチャ。
<スーパー店員>
「2等が出ました。この2等のところから、好きなお菓子を選べるかな」
買い物に来た客がガチャガチャを回してお菓子などの景品をもらう。静岡のご当地スーパー「ヒバリヤ」の日常的な光景です。このガチャガチャの狙いはスーパーで深刻になっている「食品ロス」を減らすことです。
このスーパーでは毎日、おいしい総菜や弁当が作られています。しかし、作られたものすべてが売れるわけではなく、残念ながら廃棄される商品も。その問題を解消するために始まったのが「ハピタベ」プロジェクトです。
消費期限や賞味期限が迫った商品に値引きのシールを貼る際、一緒に貼られるのがハピタベシールです。このシールを10枚集めると店内のガチャガチャを回すことができ、景品がもらえる仕組みです。期限切れの近づいた食品を積極的に買ってもらうことで、売れ残り処分する食品を減らそうという取り組みです。
<ヒバリヤ執行役員 山岸達也さん>
「ハピタベの活動が始まって約半年ですが実施の3店舗で(シールが)約1万4000枚集まっています。1割くらい廃棄が減っています」
まだ食べられる商品を廃棄してしまう「食品ロス」。その量は全国で1年間に522万トン。おにぎりだと1日で1億個分を捨てている計算です。スーパーやコンビニなどの食品を扱う事業では、食品ロスが長年の課題になっています。ハピタベを始めたヒバリヤでは、手前側にある期限がより近い商品から買う人が増え、廃棄する食品を半年間で、約760万円分減らすことに成功しました。
<ガチャを回した客>
「なんか懐かしい感じでいいですね。楽しいですね。ちょっと忘れていました、この感覚」
「(シールを)集めておいて、孫と一緒に来ます。楽しみにしているので」
ガチャガチャを回した客が口々に話す「楽しさ」。ハピタベ成功の理由は、この「楽しさ」にありました。
<店に入る濵田岳さん>
「こんにちは、お久しぶりです」
この日、ヒバリヤを訪れたのがハピタベを考案した濵田岳さんです。濵田さんは高知県のスーパーで21年間勤務した経験を生かし、食品ロスなどスーパーの課題解決を支援するビジネスを手掛けています。
<ミライデザインGX 濵田岳さん>
「ガチャってやると楽しいじゃないですか。楽しいことは合理的でなくても人が動く心理がある。スーパーは古いものが前にあって、新しいものが奥にある。(店側が)いくら前から取ってくださいと言っても後ろから取る人の方が多い。どうやって手前から取ってもらうか考えた時に、少し楽しいことを用意しようと。ガチャが一番身近にあってみんながやりたいものだということがひとつ」
頭ごなしに商品の「手前どり」を呼びかけても結果はついてこない。濵田さんはガチャガチャの持つワクワク感によって「手前どり」という消費者の行動をデザインしたのです。
<息子がガチャを回した人>
「新しい方が体にいいみたいに感じて(後ろから)取るようなこともあったんですけど、今はシールもありますし、その日に食べれば問題ないと思うので(手前から)買うようにしています」
<ガチャを回した人>
「やりやすいし、子どもも興味があるし、自然にSDGsになっていて、すごくいいと思います」
ハピタベは静岡のヒバリヤから始まり、大阪や新潟などその動きはいま全国に広がっています。
<濵田岳さん>
「ガチャで世界を救おうと思っています。喫緊の課題の地球温暖化、カーボンニュートラルにつながる企画にしていきたい」
ガチャガチャで楽しく食品ロス削減を。静岡のご当地スーパーから始まった小さな取り組みが今後、地球の未来を大きく変えることにつながっていくかもしれません。