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社説(11月20日)大手中間が純益増 地域経済にも好循環を

 静岡県内に拠点を置く上場企業の2023年9月中間決算は、為替の円安基調を追い風にした自動車関連の好業績が全体を押し上げた。
 静岡新聞社が金融機関などを除く31社を集計した結果、最終的なもうけを示す純利益の合計は前年同期比35・1%増。24年3月期通期の業績予想の上方修正も相次いだ。各社は成長継続に不可欠な人材や設備への投資に加え、関係企業との取引を適正化する姿勢も一段と強め、地域経済に好循環を創出する後押しをしなければならない。
 自動車関連を中心とする製造業22社の売上高は14・4%、純利益は37・6%それぞれ伸長した。半導体不足の緩和で新車の増産に注力するスズキなど国内完成車メーカー各社に呼応し、自動車用ランプ、バックミラー、内装皮革など各種部品の取引が増加。為替による増益効果の恩恵も受けた。食品加工は原価上昇分の価格転嫁がどの程度進められたかで明暗が生じた。
 金融を除く非製造業9社の売上高は1・4%増、純利益は4・7%減となった。消費者の行動変化への対応や価格改定に出遅れた企業で苦戦ぶりが目立った。
 下半期も製造業を中心に、さらなる業績拡大が見込まれているが、先行きに懸念材料は決して少なくない。
 中国市場では景気低迷が想定よりも長引き、楽器各社は在庫調整や減産を余儀なくされ、通期予想を引き下げた。自動車関連も日系完成車メーカーの販売低迷を受け、計画修正を迫られた。工作機械も中国の設備投資需要が細ると見通す。
 世界景気をけん引してきた米国経済は金融引き締めの影響が強まり、景気の減速局面入りが近いともされる。FRB(連邦準備制度理事会)が据え置いている高水準な政策金利を下げへと転じれば、円安の恩恵は剝がれ落ちよう。
 さらに中東のイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が拡大すれば原油価格高騰を招き、幅広い業種にマイナス影響を及ぼしかねない。
 日本経済も楽観できない。内閣府が15日発表した23年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0・5%減、年率換算は2・1%減だった。肝心の個人消費にブレーキがかかり、3四半期ぶりのマイナス成長となった。
 実質賃金は前年同月比マイナスが18カ月続く。物価に賃金の伸びが追いつかない局面が長引き、家計が負担増を嫌気して節約志向を強めた。本県など国内の経済は成長持続の正念場にある。だからこそ、地域を代表する上場各社は好業績企業を先頭に、利潤を労働者や下請け企業に分配する役割が問われる。

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