命の記録 生き生きと 平間至さん写真展 20日まで静岡市で
タワーレコードの「NO MUSIC,NO LIFE.」キャンペーンのポスターをはじめ、音楽アーティストの躍動感あふれる写真で新スタイルを打ち出してきた写真家、平間至さん(60)。これまでの活動を回顧する「平間至写真展 写真は愛とタイミング!」が、静岡市駿河区のグランシップで開かれている。自身の娘の日常写真、写真館での家族写真などを含め230点が並び、「敷居は低く、写真表現の面白さ、奥深さを知ってもらえる」と手応えを語る。
平間さんは宮城県塩釜市で写真館の3代目として生まれた。両親はクラシック好き。幼少からバイオリンを習い、日常に写真と音楽があふれた環境で育った。中学ではパンクムーブメントに出合って傾倒、今でも即興的、実験的な音楽が身近にあるという。
「音楽がインプットで写真がアウトプット。本も読まない、映画も見ない。音楽から全て学んできた。ミュージシャンを撮るのではなく、写真自体を音楽にできたら」。そのアプローチに決まりはない。サンボマスターは演奏を終えるエネルギッシュな一瞬を捉え、安室奈美恵さんは歌って踊るアクティブな姿ではなく、彼女自身の存在感にフォーカスした。
「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」が登場した「NO-」の撮影では、平間さんが事前に口ひげや付け歯などのパーティーグッズを並べておいたという。坂本龍一さんら3人が思い思いの表情を浮かべた1枚は「愛きょうある写真になった。こちらからは何も言わない。被写体の自発的なエネルギーが出た瞬間にシャッターを切る」
祖母と孫7人、横顔の男性など、会場に並ぶ家族のポートレートには、それぞれが歩んできた証しが凝縮する。「最初は誰もが良く撮られたい。対話を重ねると、その意識を忘れる瞬間がある。今の自分も悪くないなと肯定してあげられたら」
写真は「命の記録」とも形容する。「人が生まれて死んでいく根底に悲哀があるだろう。エネルギーを発したり、演奏したりすることで、それでも生きていく喜びを感じられる。今後も記録し続けたい」と力を込める。
同展は20日まで。同日午後2~3時、平間さんがギャラリートークを開く。
(教育文化部・岡本妙)
ひらま・いたる 1963年、宮城県塩釜市生まれ。日本大芸術学部写真学科卒業。写真家・伊島薫さんに師事し、90年に独立。2015年、都内に平間写真館TOKYOをオープンした。