遠州灘・キャスティング クロマグロとの激闘制す【魚影を追って】
6月17日の早朝、マグロを仕留めることを夢見るアングラー4人を乗せて、遠州灘に横たわる黒潮へ向けて船を走らせた。
しばらくは海鳥もまばらだったが、トビウオを頻繁に目にする潮に入り、状況が一変。魚探が大型魚の反応を捉え始め、海鳥の動きが慌ただしくなった。船を止めてアングラーにキャストしてもらう。
あちこちで泳ぐ魚影は普段見ている物とは比べ物にならない大きさで、イルカなのでは?と疑いたくなるほどだった。そんなことを思った瞬間、投げ込んだペンシルポッパーに巨大な黒い影が襲いかかった。フッキングには至らなかったが、夢にまで見たクロマグロだ。しかもかなり大きい。
アングラーたちは一番強いタックルに持ち替え、がむしゃらにキャストを繰り返すと、100キロはあるであろうマグロのバイトが連発する。だが力が強く、合わせが決まらない。そんな中、一番最初にバイトを出したアングラーが見事フッキングを決めた。
大きく曲がったツナロッド、大型のスピニングリールからはPE8号ラインが、けたたましいドラグ音とともに引き出されていく。50キロほどのキハダマグロなら余裕の道具でも、この巨体の強く早いファーストランは、250メートル走っても止まらない。
船の先端で必死にリールを巻くアングラーをみんなでサポート。〝夢〟と1本の釣り糸でつながっているアングラー。一体感に船上が包まれた時、初めてこのマグロは獲[と]れると確信できた。
長時間の、まさに死闘。5センチずつ巻いては一休みを繰り返しながら10メートル巻いたラインが、マグロがほんの少し尻尾を動かすだけで簡単に出されてしまう。
40分ほど経っただろうか、急にマグロが浮上し始めた。「巻ける」。この時を待っていたアングラーは勝負に出た。80メートル下の膠着[こうちゃく]状態から、一気に50メートル浮かせた。残り30メートル。
そしてさらに20分を超えた辺りからラストスパート。ラインが張り詰めキリキリと鳴く。ロッドとラインを直線に構えて1メートルずつ浮かせにかかる。船の下へ入り込む度に船を動かし、マグロを外へ出す。「船長見えた!」
待望の瞬間が訪れる。黒潮の真っ青な海に、大きな青い魚体が光る。ブルーフィンツナだ。釣り人憧れのクロマグロが海面に顔を上げた。あまりの大きさにどよめく船上。ギャフを3本掛けたが、1本が伸びてしまい船に引き上げることができない。
尻尾にロープを掛けて5人がかりでようやく船内に引き込んだ。「やったー!」と歓喜の声を上げると同時に、体中の力が抜け落ちるアングラー。
その後も状況は良くバイトは30を超え、ヒットの量産となったが、ラインブレークが頻発。使えるタックルが無くなったところで、まだ跳ねるマグロに背を向けて帰港の途に就いた。
昨今のクロマグロ事情で厳しい規制がかかる中、翌日より禁漁と通達されていた、ぎりぎりのタイミングでのうれしい釣果となった。
問い合わせはTrust<電080(5294)5910>へ。
(岡田高雄・Trust船長)
<メモ>クロマグロは30キロ未満は採捕禁止、30キロ以上のキープは1人1日1匹までで水産庁への報告が必要など、資源保護のための制限が設けられている。また、採捕量に応じて採捕禁止期間が設定され、7月はすでに採捕禁止となっている。詳細は水産庁のウェブサイトなどで確認を。