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社説(6月7日)リニア期成同盟 情報共有し議論前進を

 リニア中央新幹線の沿線都府県による建設促進期成同盟会の総会が都内で開かれた。昨年7月に本県が期成同盟会入りして以来の初開催で、川勝平太知事が出席した。水資源や自然環境への影響を巡る議論が続いて着手が遅れている静岡県内の工事に関し、各知事から打開を求める意見や要望が相次いだ。
 本県がJR東海に指摘する水資源やトンネル残土置き場への懸念について、これまで沿線都府県と情報共有されてきたとは言い難い。全国的には本県がJRに難癖を付けて工事を遅らせている「悪者」と見られる向きがある。
 そんな中、山梨県の長崎幸太郎知事が、静岡県が抱える問題を沿線の自治体全体で共有すべきだと提案したことは歓迎したい。川勝知事は「多くの知恵が出され、問題の早期解決に資する」と期待感を示した。沿線自治体の関与を得ながら議論を前進させてほしい。本県から積極的に沿線自治体に接触し、本県の立場への理解を得る努力が欠かせない。一方、山梨県内の県境付近の高速長尺先進ボーリングについて、詳細なデータの開示を前提に容認するなど、沿線自治体の意向を踏まえる必要もあろう。
 川勝知事は最近、山梨県内の高速長尺先進ボーリングの中止を求め、行政権の在り方に関わると長崎知事の反発を招いた。以前にも同盟会の会長を務める大村秀章愛知県知事と衝突したり、神奈川県内の用地取得の進捗[しんちょく]に言及して黒岩祐治知事を刺激したりした。今後もこうしたあつれきを繰り返していては沿線自治体の協力など望むべくもない。川勝知事の不用意な言動が本県の「悪者論」に直結することを忘れてはならない。
 一方、長崎知事は同盟会内の研究会の案として、静岡空港に東海道新幹線の新駅を整備する構想を発表。「広域にメリットが波及する」と意義を強調した。JRはこれまで一貫して新駅建設を否定し、本県との協議に応じていない。同盟会が一体的にJRに働き掛けてくれれば心強い。
 ただ、本県にとって水問題の解決が最優先であることに変わりはない。新駅は工事推進の交渉材料ではない。長崎知事も「水問題とは別の話」との見解を示している。ほかの自治体にもこうした前提を理解してもらう必要がある。
 同盟会の総会と同じ日に開催された自民党の特別委員会では、県内選出議員も発言し、流域住民の思いを代弁したり、川勝知事やJRに注文を付けたりした。しかし、県内自民党議員は知事との意思疎通を欠き、これまで積極的に関与してこなかった。同盟会で問題の共有化を図ろうとする今、県とも連携してもっと存在感を発揮するべきだ。

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