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製造業 価格転嫁、成長投資を推進【コロナ後へ挑む 検証3月期決算㊤】

 インドでの好調な販売、円安効果を背景に2023年3月期の連結売上高が4兆6416億円と初めて4兆円を超え、純利益が最高だったスズキ。「記録的な円安が一番大きかったが、技術開発を含め実力値はまだまだ」。鈴木俊宏社長はオンラインの決算会見で表情を引き締めた。見据えるのは脱炭素や電動化シフトといった世界的潮流への対応だ。24年3月期は2300億円と前年を上回る研究開発費を投じ、「成長投資の拡大」を推し進める。

静岡県内製造業の業績推移
静岡県内製造業の業績推移

 海外展開する大手製造業の多くは円安の追い風も受けて収益を拡大し、コロナ禍からの復調を印象づけた。ヤマハは中国の販売減や半導体調達難の中、2年連続で増収を確保。24年3月期は「中国や欧州市場の消費が戻る」(山口静一常務執行役)とし、初心者向け楽器の回復を見込む。完成車メーカーの生産回復で増収増益となった村上開明堂は売上高1千億円到達を掲げ、コロナ禍で抑えてきた設備投資を進める方針だ。
 一方、部品不足や原材料高が重しとなり、輸送機器や工作機械などの一部企業は最終減益や最終赤字となった。24年3月期も約半数の11社が最終減益を見込み、各社は調達コストの抑止に全力を挙げる。
 スズキの鈴木社長は将来の国内車種の値上げ方針を示した。共和レザーは受注回復や価格転嫁の効果で24年3月期に増益を見込むが、花井幹雄社長は「取引先によって転嫁に濃淡があり、継続して理解を求めていく。改善方向とされる半導体不足にもしっかり備える」と警戒を緩めない。
 23年3月期に10年ぶりに最終赤字となったはごろもフーズは、主力製品の値上げ効果が出てくるとみて、24年3月期は黒字回復を見込む。
 企業トップは、EV(電気自動車)化などで激変する海外主要市場への対応を今期の重要テーマに掲げる。ユタカ技研の青島隆男社長は中国での受注減を予想し、新規顧客開拓を急ぐ。エンシュウは工作機械の開発強化に向け、4月に「EV戦略チーム」を設立。勝倉宏和会長は「先行する米国、中国の情報を逃さず、将来の受注獲得へ開発を進める」と意気込む。
      ◇ 
 静岡県内上場企業の3月期決算は、円安を背景にした輸出型製造業の好業績が寄与し、前期比で増収増益となった。社会経済活動の正常化で需要の本格回復が見込まれる中、原材料・エネルギー高の影響をいかに抑え、成長につなげるか。製造、非製造、金融の各分野で「コロナ後」への戦略を探る。

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