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社説(4月28日)ギャンブル依存症 対策強化に猶予はない

 政府は大阪府と大阪市が申請していたカジノを含む総合型リゾート施設(IR)整備計画を認定した。認定審査に当たった国土交通省の有識者委員会は、期待される経済効果を高く評価した一方で、ギャンブル依存症調査の充実や依存症対策の定期的な効果検証を求めた。
 厚生労働省の2021年の調査によると、競馬や競艇といった公営ギャンブルやパチンコ、スロットなどの依存症が疑われる人は196万人と推計される。人口比で計算すると、静岡県内では6万人近くいることになる。
 依存症は患者本人の多額の借金や犯罪、自殺などの原因になるだけでない。家族の貧困や虐待被害などにつながるケースが目立つ。国内初のIR認定を機に、国や自治体は問題の深刻さを改めて重く受け止める必要がある。今こそ対策の強化、充実に力を注がなければならない。
 依存症が増える懸念は高まっている。公営ギャンブルはいつでもどこでもできるネットや電話での投票が増えている。近年はスマートフォンやパソコンがあれば賭け事ができるオンラインカジノの利用者が急増している。依存症対策強化に猶予はない。
 18年にはギャンブル等依存症対策基本法が施行されたが、遅すぎたとも批判された。基本法は、カジノを解禁するIR整備法の成立に向けて、新たな依存症を生み出す懸念が根強いカジノへの批判を和らげるための制定だった感は否めなかった。
 基本法は都道府県に、依存症対策推進計画の策定に努めるよう義務付けている。施策は依存症予防のための教育、相談支援、医療提供体制の整備、社会復帰支援などで、本県は既に策定している。大阪府は昨年、依存症対策を推進する条例を制定し、29年目標のIR開業までに治療や社会復帰の支援拠点の整備などを進める。
 ただ、治療についてはギャンブル依存症が病気の一つであるという認識は広がっていない。依存症の治療は20年4月から保険適用になった。それでも依存症患者のうち実際に治療している人はほんの一部にすぎない。周知が足りないと言わざるを得ない。
 依存症も他の病気と同じように治療より予防を重視してほしい。カジノに関しては予防対策として日本人に対しては週3回までなどと入場制限を設け、入場料6千円を徴収する。だが、効果を疑問視する声も上がる。他のギャンブルやパチンコなどではこうした規制は難しい。
 だからこそ予防のための教育は重要だ。高校など成人になるまでの段階でギャンブルに潜む危険性を伝える機会を必ず設けるべきだ。

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