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社説(4月3日)入管難民法改正 受け入れ促進に転換を

 政府は、外国人の収容や送還に関するルールを見直す入管難民法改正案を閣議決定した。本国への強制送還が停止される難民申請の回数を原則2回までに制限する。2021年に野党の反対などで廃案となった旧法案を大筋で維持した。
 出入国在留管理庁によると、22年に難民認定した外国人は過去最多だった21年の74人を大幅に上回る202人。それでも万単位で難民を受け入れている欧米諸国と比べると極端に少ない。母国での迫害を恐れを理由に難民申請したものの不認定となった外国人は延べ1万人を超える。「難民鎖国」といわれる状況に変わりはない。
 法改正の理由を入管庁は送還逃れの意図で申請を繰り返すケースが多く、入管施設での長期収容が問題化していると説明する。だが、同時に政府が難民認定を積極的に増やしていく方針をはっきり示さなければ、申請回数の制限は難民受け入れに後ろ向きと受け止められても仕方がない。
 難民条約は、人種や宗教、国籍、政治的意見、特定の社会的集団の構成員であることを理由に迫害の恐れがあり、国外に逃れた人を難民と定義し、日本などの加入国に保護を義務付けている。ただ、条約の解釈は各国に委ねられているため、難民の認定数に大きな差が生じている。
 入管庁は22年の難民認定の状況を発表するとともに、難民認定判断の考え方を初めて示す手引を公表した。性的少数者であることなどを理由にした迫害が認定され得るとも明示した。国内外から認定数の少なさを指摘され、手続きの透明性を求められていたことが背景にある。
 ただ、手引は難民条約の文言の解釈を明確に示すのが目的で、難民認定の範囲を広げるためではないと入管庁は繰り返した。保護してほしいと訴える人をできるだけ多く保護しようという姿勢は伝わってこない。
 旧法案は与野党の修正協議でまとまりかけたが、名古屋入管に収容中だったスリランカ女性が死亡した問題を受けて政府は成立を断念した。手引は改正法の今国会での成立に向けて、手続きの透明化を進めたとの成果をアピールしただけという声も上がる。
 政府は不足する労働力の確保のためだけではなく、安住の地を日本に求め、母国を脱出した外国人もできる限り受け入れるべきだ。まずは30年までに認定年間1千人以上といった具体的な数値目標を掲げてほしい。22年末の在留外国人は初めて300万人を超えた。外国人との共生は当たり前の風景になってきた。
 難民政策を受け入れ促進に転換しても国民の理解は得られるだろう。

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