あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

無人駅が舞台 芸術祭6年目 作品の主役 地域へ人へ NPO法人クロスメディアしまだ理事長/大石歩真氏【本音インタビュー】

 大井川鉄道の無人駅と周辺の集落を舞台にした「UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川」が6回目を迎えた。専門誌で「注目の国際芸術祭」として選出されるなど知名度を高め、アーティストと地元住民との協働による作品制作は地域づくりの観点からも評価を受けている。

大石歩真氏
大石歩真氏


 -無人駅をテーマにしたきっかけは。
 「地域資源を掘り起こすことがアーティストの重要な役割と考えた時、私たちの暮らしの原風景が残る大井川流域の里山に目を向けるようになった。最初は無人駅だった舞台が集落へと移って茶畑や空き家、公共空間に広がり、次の段階で作品が『人』へと変化した。住民が映像作品に出演したり、住民の顔の型取りをしたり。地域に生きる人々の姿こそが資源だと発見してもらっている」
 -地域住民との関わりがもたらした変化は。
 「信頼関係の構築を重視してアーティストの多くが複数年かけて参加し、島田市川根町抜里地区などでは既に住民との“制作チーム”ができている。お互いフラットな関係で、時には住民が先生になることもある。こうした特徴は都会のアートイベントや大規模芸術祭にはない価値を生み出している。今年は同地区のかつての交易路をハイキングルートとして整備し、頂上に作品を設置した。芸術祭を通じて新しい道や風景が生まれる事例となった」
 -新型コロナや台風15号の影響は。
 「過疎化する地方、情報化・効率化を重視する都市部の両方で無人化が進む中、コロナ禍で街が無人化し、人と人の触れ合いがより求められるようになった。一方、台風15号の被害により大鉄の運休が続き、存続が危うい状況だ。今回の芸術祭ではJR島田駅前にも作品を設置し、駅前から無人駅周辺に専用車を走らせる。台風の爪痕が残る現状を街中の人にも知ってもらい、現地にもぜひ足を運んでもらいたい」
 -今後の目標は。
 「芸術祭を通じて地域の魅力を再認識し、人々が集うことで大井川流域を持続可能で魅力的な地域にしたい。本年度完成したゲストハウスを拠点にアーティストの長期滞在プロジェクトを開始するほか、静岡空港から海外のアーティストを受け入れることも計画中。あらゆる地域資源を伝え、表に出していく一つのプラットホームとして芸術祭を機能させていきたい」
 (聞き手=島田支局・中村綾子)

 おおいし・あるま 1977年生まれ、島田市出身。広告会社勤務などを経て帰郷しクロスメディアしまだを設立、2011年にNPO法人化した。18年に開始した無人駅の芸術祭で総合プロデューサーを務める。

 

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ