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社説(2月1日)地域医療再編構想 地方の現場から提言を

 政府は高齢者数がピークになる2040年ごろを見据え、23年度から新たな地域医療再編に向けた議論を始める。医療提供体制の効率化を図り、医療費の膨張を抑制する。同時に、超高齢社会に向け、持病があっても支障なく日常生活を送ることができるよう「支える医療」への対応を重視する。議論を踏まえ、都道府県が策定済みの地域医療構想を更新する形で必要となる病床数の推計を求める方針だ。
 新構想で焦点の支える医療では、かかりつけ医が重視されるだろう。病院と診療所の病診連携が欠かせない。新型コロナウイルス対応で課題となった公的医療機関と民間病院の役割分担や、医師ら医療人材の都市部への偏在問題もしっかり議論したい。実効性の高い構想となるよう、自治体は現場の実情を踏まえ、あるべき医療体制を積極的に提言すべきだ。
 現行の構想は団塊の世代が全て75歳以上になる25年が目標。全国で必要な病床を約119万床とし、10年かけ14万床を減らす計画だった。しかし、病床削減は医療機関の経営を左右するため停滞し、厚生労働省は19年に再編や統合が必要と判断した400超の施設名の公表に踏み切った。静岡県内では検討対象となった41公的病院のうち5公立病院、9公的医療機関等の計14病院名が示された。全国知事会などは猛反発し、削減は想定より1万床少ない水準にとどまる見込み。
 厚生労働省によると、病院の機能は4分類される。集中治療が必要な重症患者向けの高度急性期、一般的な手術をする急性期、リハビリ向けの回復期、長期入院の慢性期で、地域の実情に応じ四つの機能を適正配置する。数値設定は地域の病院などで構成する調整会議で協議する。
 支える医療といえども、症状急変の際は病院への救急搬送が必要になる。静岡県内でも都市部と中山間地では医療提供体制に格差があり、再編協議ではドクターヘリの効率的な運用を含め幅広い観点で協議してほしい。
 新型コロナウイルス禍では感染症法の規定と各地域の医療提供体制に食い違いが生じた。発熱外来に患者が殺到し、病院で救急搬送の困難事案が増えた。岸田文雄首相は新型コロナの法的位置づけを5月8日に季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる方針で、医療再編の議論を活発化させる可能性がある。
 厚労省は再編計画の阻害要因に医療機関の利害調整を挙げ、知事の権限強化を検討する意向だ。都道府県の調整能力も問われることになる。

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