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社説(1月19日)れいわとN党 議席の愚弄許されない

 国会議員の議席がこれほど軽んじられる事態を誰が想像しただろう。昨年7月の参院選で初当選したNHK党のガーシー(本名・東谷義和)氏はこれまで、一度も登院していない。れいわ新選組は体調不良で辞職した党所属参院議員の残りの任期を、比例代表で落選した5人に交代で務めさせると表明した。
 ガーシー氏は院の許可を得ず、当選以降もアラブ首長国連邦(UAE)に滞在しているとされる。国会法は議員は召集日に国会に集まらなければならないと規定する。参院側は召集後も欠席すれば懲罰委員会開催に向けた手続きに入る構えだ。
 欠席理由を不当逮捕の恐れがあるとしてきたガーシー氏は、自身の交流サイト(SNS)で3月上旬に帰国すると明らかにした。だが、通常国会は1月23日に開会する。帰国表明は複数の著名人が脅迫や名誉毀損[きそん]の疑いでガーシー氏を告訴し、警視庁が同氏に任意の事情聴取を要請したことを踏まえたとみられる。N党の立花孝志党首は記者会見で「国会に出るかどうかは議員が決めるべきだ。個人的には帰ってきてほしくない」と述べた。国権の最高機関を構成する議員の責務を愚弄[ぐろう]していると言わざるを得ない。
 一方、れいわの山本太郎代表は5人の落選議員を順次1年程度で繰り上げ当選させる意向で、これを「ローテーション制度」と説明した。17日の中央選挙管理委員会が繰り上げ当選を決めた大島九州男氏を手始めに、長谷川羽衣子、辻恵、蓮池透、依田花蓮の各氏が当選と辞職を繰り返すことになる。
 憲法第46条は参院議員の任期を6年と定め、3年ごと半数を改選する。衆院の抑制機能を期待し、高い専門性を持たせる趣旨で任期が長い。解散はなく半数ごと改選する制度は、議会機能の継続性に配慮したと解されている。任期を全うする意義は極めて重い。
 れいわは、山本代表を支える共同代表を置く新体制を発足させた。党が支持母体と呼ぶ各地のボランティアの運動力強化を進める意向で、限られた人材を有効に活用するとした。多様な民意を政策立案に反映させる取り組みは歓迎するが、国会議員の事実上の“輪番制”は人材の有効活用とは似て非なるものだ。
 国会でも地方議会でも議事が成立する定足数の規定があり、定めがある場合を除き出席議員の過半数の意思表示で賛否が決まる。代表民主主義制度は1票の負託を受けた議員が、その職責を議場で誠実に全うすることを前提にしている。与野党は新たなルール作りを早急に協議すべきだ。

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